銀行にだまされるな

4104597023銀行にだまされるな!
須田 慎一郎

新潮社 2005-04-21
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「銀行にだまされるな」を読みました。とてもおもしろかったです。

 著者はよく取材をしていて憶測の部分も多少ありますが、ほとんどの人が知らない銀行の内幕を書いています。話の内容の中心はUFJと東京三菱の合併ですが、三井住友やゴールドマンサックスの話も出てきてとても読みごたえがありました。

 一般の方は東京三菱が模範的な銀行だと思っている人が多いと思います。しかし東京三菱は単に無能だったからバブル崩壊の影響を受けていないだけだと著者は言い切っています。その証拠に東京三菱はいまや一番利益率の悪い銀行になってしまいました。その焦りからUFJの吸収合併という手に出たということです。

 私のまわりでも他の銀行は危ないからといって東京三菱に預ける人が多かったのですが、私は他の銀行との違いがほとんど見えない東京三菱がそんなにいい銀行だとは思えませんでした。

 私はアメリカに住んでいたとき近くの銀行に口座を開いていました。もう10年以上も前の話ですが、窓口に言ったときに驚いたのはほとんど人がいなかったことです。もちろんアメリカでも月末など客が殺到する時期があります。そんなときは学生アルバイトなどをいっぱい臨時で雇って窓口に立たせていました。日本のように番号札を持たせて客を待たせるなんて失礼なことはアメリカで体験したことがありません。
 考えてみれば長年やっていれば銀行だっていつどれくらい客が集中するかくらいわかると思います。それなのに窓口を増やすこともせず、客をえんえんと待たせて平気でいるというのはもはやサービス業ではないでしょう。

 銀行の人たちはいまだに自分たちの仕事は特別であるというエリート意識があるようです。しかし世界の金融機関からみると日本の銀行のレベルの低さは歴然です。いまやトヨタの方が格付けが上の時代です。少し自分たちのレベルを見直したほうがいいのではないでしょうか。

 UFJと東京三菱の合併のいいかげんさは目に余るものがあります。その経緯では政治もからんでドロドロした世界が見えてきます。さらにむかついたのは銀行員は1000万以上の預金のない客をゴミと呼んでいるとのことです。だからお金の出し入れや送金で手数料をしっかり取るということのようです。確かに彼らはビジネスでやっているので利益はとらないといけないでしょうが、ゴミと呼ばれる筋合いはありません。そのゴミからお金をかすめとっているあなたたちはゴミ以下でしょうといいたい。

 このように顧客をないがしろにしている組織は早晩消えてなくなるでしょう。UFJがそのいい例で他の銀行も心を入れ替えないと外資系や他分野の企業に飲み込まれてしまうでしょう。
 ただ銀行員の中でもこんな人ばかりだとは思いません。三井住友の頭取のインタビューが本の中にありましたが、彼は顧客重視と新しいことにチャレンジしていくという姿勢があるところが評価できました。既存の銀行が組織として生き残れるかは企業の理念としてそのように行動できるかにかかっているのではないでしょうか。

 私たちも銀行にだまされないように気をつけないといけません。リボ払いのクレジットカードや高金利の消費者金融サービスなどいまや銀行はなりふりかまわず金儲けに走っています。これらのサービスは本当に顧客のメリットを考えてやっているのではなく、借金しているということを意識させないようにして高金利の借金をさせるといういわばだましのビジネスです。これらの契約をするときは自分にどういうメリットがあるのかをちゃんと理解して契約すべきだと思います。

 これだけ銀行が色んなサービスを提供してくるのは金融自由化もありますが、企業がお金を借りなくなったこともあります。大企業は信用力があるため社債や株式の発行で資金調達ができます。なので自然と中小企業や個人にシフトしていかざるを得ない状況にあります。銀行がサラ金をやるのも時代の流れなのでしょうが、今まで殿様商売をやっていた彼らが個人相手のビジネスができるわけがありません。

 私がいるITビジネスもそんなに資本をかけなくてもはじめられるようになりました。機器は安いし回線も個人のお金でブロードバンドがひけます。そう考えると銀行の出番がほとんどなくなりつつあるのかもしれません。今までのようにお金を貸してその利ざやで稼ぐだけではやっていけなくなったということだと思います。

 どんな仕事でも顧客にメリットを提供するからお金がいただけるものだと思います。一時的には儲けられても顧客にメリットを提供できない企業はいずれ淘汰されます。それが資本主義だと思います。

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