日本企業のモジュールアーキテクチャー

日本もいよいよ産業構造の変化が激しくなってきました。ソニーは1万人リストラですし、サンヨーも多くの工場閉鎖を行っています。それに比べ自動車企業は好調です。トヨタや日産、ホンダなどは非常にいい業績でビジネスを行っています。同じ日本企業でなぜこれだけ明暗が分かれたのでしょうか?

 家電メーカーが怠けていたとは思えません。ソニーはちょっとその気がありますが、多くの家電メーカーがピンチの状態にあるというのは何か理由があるような気がします。色々考えてみると行っているビジネスの種類が理由ではないでしょうか?

 自動車は厳密に設計されて構築されているシステムです。この製品の特性は企業の構造にも反映されています。つまりトヨタなどの自動車メーカーを頂点として多くの系列部品メーカーが指示されたとおりの部品を製造します。まさに伽藍のような構造です。この製品の特性はモジュール化ができないということです。つまり部品メーカーは自動車メーカーの指示通りに製品を作らなければいけないということです。これは今まで日本企業が成功していたモデルです。

 一方家電メーカーはどうでしょうか?今までは自動車メーカーのように伽藍のような構造でした。TVやVTRなどモジュール化ができない製品特性を持っていました。しかしいまや家電製品は一般で売られている部品を組み合わせて売るというビジネスに変わりつつあります。DVDレコーダーや液晶テレビなどの製品はCPUはインテルIBM、HDDは日立やMaxtor,液晶パネルはシャープやサムソンなどを使っていて完全なモジュール化製品となってしまいました。そしてこれらの製品で自動車会社のように仕様を支配している企業はありません。
 家電の中でもパソコンほどモジュール化が進んだ製品はありません。いまや素人でも部品を買ってきてPCを組み立てることができます。これはPCを作るための標準仕様が決められているため、仕様に準拠していればどんな企業でも製品を作ることができるためです。ただしノートPCはモジュール化がそんなに進んでいないためデスクトップPCよりは日本企業が健闘しています。それでもモジュール化製品であるため激しい競争にさらされています。

 いまや世界でもっとも高い人件費を取る日本人の生き残る道は差別化しかありません。製品のモジュール化が進むとコモディティ化が促進されます。その中でいかに高収益をあげるのかを考える必要があります。例えば日本の家電メーカーはインテルのような部品に特化するとかDellのようなカスタマイズに自由に答えるなどモジュール化製品で成功している企業から学ぶべきではないでしょうか。

 このように考えると自動車会社と家電企業の明暗が分かれたのもわかるような気がします。家電メーカーは製品のモジュール化が進んでコモディティ化してしまいました。その上中国や韓国などのメーカーが価格を武器に攻めてきます。日本では顧客の品質に対する目が厳しいため新興国の製品はそれほどシェアをとっていませんが、世界規模で見ると明らかに日本の家電メーカーは凋落しています。
 一方自動車は日本の今までの成功モデルを発揮できる分野です。中国や韓国メーカーが日本メーカーのレベルに追いつくのはまだ先でしょう。それまでは生き残ることができるかもしれません。

 私がシステムを考えるときはモジュールということを意識します。そのように考えるようになったきっかけはこの本を読んでからです。このモジュールという考え方はITなどのシステムだけではなく企業形態や社会のあり方まで及ぶ基本的な考え方です。ちょっとアカデミックな内容ですが、かなりお勧めの本です。

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