トヨタ生産方式 - 必要から生まれたイノベーション

 いつも時間が余ってしまうとふらっと本屋さんに入って何冊か買ってしまいます。
こんなことをやるので積読状態の本であふれてしまうんですね。
最近はちょっと抑えるように注意しています。

 大阪に帰ったときにちょっと寄った本屋さんで前から気になっていたトヨタ生産方式を買いました。
読みやすくておもしろいので一日くらいで読んでしまいました。

気になったところをめもってみました。

1 多品種少量生産の必要性から生まれた生産方式
 トヨタが自動車を作り出した頃はフォードが流れ作業によって大量の車を生産する方式を確立しつつありました。
日本でもアメリカを見習って各社が大量生産を行おうとしていましたが、トヨタだけはそれに逆行する方向に進もうとしていました。
トヨタの社長は3年以内にフォード車やGM車のレベルまで持って行くことを宣言します。
規模の小さい企業で大企業並のラインナップを揃えるためには多品種少量で生産できる技術が必須だったのです。
著者はそれを実現するための様々なアイデアを考えて実行していきます。
最初はあまりにも革新的な考え方だったために理解されずに悩んでいたそうです。
イノベーションを起こす人は最初は理解されないものですからね。
 
2 プル型生産方式から生み出されたかんばん、自働化、平準化
 通常、機械の生産では部品を作りだめして組み立て工程で一気に作るという手順をとります。
しかしこれでは在庫部品が多くなってしまって財政的なリスクが高くなってしまいます。(プッシュ型生産方式)
これに対してトヨタでは組み立て工程が必要なときに必要な部品だけが手元にある状態をめざします。
つまり後工程の人が前工程に部品を取りに行くというプル型方式に変えます。
しかしこれは言うは易くで、プレス工程など一気に仕掛品を作ってしまう工程では非常に負担になります。
なぜなら作るものが変わるたびにプレス型の付け替え作業が発生して手間がかかってしまうからです。
トヨタではこの付け替え作業を努力の結果1時間から3分に短縮して多品種少量生産を実現していきます。
そして有名なかんばん方式、機械の自働化、平準化といった手法を編み出していきます。

3 会計が全てではない
 会計の世界では機械というのは毎年価値が下がっていくものとされています。
減価償却という考え方ですが、著者はそれはおかしいのではないかといいます。
古い機械だってちゃんとメンテナンスしていれば価値が下がらないものがあります。
結局機械の価値はどれだけ付加価値を生み出せるものかということではないのでしょうか。
確かにギターはビンテージになるとプレミアがついて高くなるものもありますよね。
既存の知識を鵜呑みにするのではなく自分の頭で考えることが大事なのでしょうね。

4 人間が基本
 流れ作業というと人をロボットのようにこき使って非人間的な印象がありますが、著者は生産現場の基本は人であると考えています。
著者はフォードも同じように考えていたようだが、引き継いだ人たちに誤って解釈されたようだと書いています。
私も流れ作業をしたことがありますが、やっていて非人間性を感じました。
ラインを止めることは悪のように作業員を酷使していましたね。
しかしトヨタのラインはいつでも止められるように作られているそうです。
そしてちゃんと作業ができるように指導するとのことです。

5 付加価値を生み出すことこそ仕事
 著者は工場にいるときの口癖は「仕事をしてくれ」だったそうです。
もちろんみんな朝ちゃんと来て仕事をしていたのですが、著者にとっての仕事とは付加価値を生み出すことが仕事だったのです。
なので機械の調整や作業の準備など生産のためにやらなければいけないことは彼にとっては仕事ではありませんでした。
翻って自分のことを考えるとどれくらい仕事してるかなと考えてしまいますね。

 この本を読んで思ったのは自分で考える重要さでした。
トヨタ創設者の豊田佐吉は理論よりも現場を重んじる人だったそうです。
創設者のスピリッツが企業の文化として定着していたのでしょうね。


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大野 耐一

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