苦しい時

 最近はかなり落ち着いたのですが、ここ2〜3年はいろんな問題の対応でとても苦しい時期がありました。
その原因は父が病気で倒れたからでした。
病気だけならたいしたことがなかったのですが、借金問題や係争中の裁判、経営していた会社の問題などが一気に明るみになったからです。
今まで父が問題先送りにしていたツケが私にかかってきたんですよね。
医者、弁護士、裁判所、銀行、不動産屋と普段お目にかかることのない人たちに頻繁にあうことになり一瞬どうしたらいいのかわからなくなってしまいました。
今まで体験したことのない問題ばかりだったので逃げ出したくなりましたが、そんなとき会得した技でなんとか乗り切ることができました。


 その技とはまず第一に問題を直視しすぎないということです。
これは車のレーサーの話が元になっています。
レーサーのインストラクターはドライバーが壁などに激突しそうになったとき頭をぐいっとまわして壁と反対方向を見るようにさせます。
ドライバーは怖いから思わず壁を見てしまいますが、そうすると不思議なことに自分から壁にぶつかっていくそうです。
よく自動車事故でもわざわざ電柱にぶつかって事故っているのを見ますが、人間は注意の向く方向に行ってしまうという習性をもっているようです。
これと同じであまり問題のことばかり考えていると悪い方向に行ってしまいます。
全く無視するのはよくないですが、ちら見間隔で考えていけばストレスもコントロールできます。
このあたりのさじ加減は試行錯誤していくしかないでしょうね。


 第二にやることをリストアップします。
そして細かい作業にブレークダウンしていきます。
どんなに難しい作業もブレークダウンすれば単純作業の集合です。
そして終わったらチェックをしていく、そうすれば達成感も持てます。
これはプロジェクトマネージメントの基本でもありますよね。


 第三に相談相手を見つけることです。
いろんなアドバイスを受けるだけでもやるべきことのイメージが自分の頭のなかに出てくるようになります。
裁判なんてどういうふうに進められるのかなんて素人にはわかりませんからね。
しかし、わかってしまえばたいしたことではありません。
手順に従ってやっていけばいいだけです。
自分が幸運だったのは誰に相談すればいいかを教えてくれる相談相手がいたことです。
法律関係ならこの人、ビジネスについてはこの人という感じで紹介をしてくれました。
普通は誰に相談したらいいかもわからないものですからね。


 第四に自分の気持ちとしてできないかもしれないけどやれるところまで努力してみようと思ったことです。
すると少し気持ちが楽になって気がついたらあらかた解決することができました。
ITの世界でもベストエフォートという言葉がありますが、できるところまで努力するという姿勢は大事だなと実感しました。


 この災難に見舞われたときはなぜ自分がこんなことをしなければいけないのかとふがいない父を恨んだものでした。
しかし、この体験は私にとってとても勉強になりました。
そして世の中がどのように動いているのか少し見えたような気がします。


 この体験で感じたのは世の中にはずるい人たちがたくさんいるんだなということでした。
そういう人たちは自分が提供する価値以上の富を得ようとします。
残念ながら私たちの社会ではそういう人たちがお金儲けしているのが実情ですが、長期的にみれば彼らはだめになっていくと思います。
 また立派な肩書きを持っていても仕事ができない人はたくさんいるのもわかりました。
難しいテストをパスしても顧客に価値を提供できるとはかぎりません。
やはり肩書きではなくその人の能力を見極める目が必要だと思いました。
そういう見方ができるようになっただけでも今回の苦労は価値があったのかなと思います。


 最近引越ししてはじめての電車で通勤しているときにふとそんなことを思いました。