貸し込み

 

貸し込み
貸し込み黒木 亮

角川書店 2007-09
売り上げランキング : 1308

おすすめ平均 star
star就活をひかえた学生のレビュー
star実在の事件をモデルに書かれた小説

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私はあまり小説は読まないのですが、日経新聞にこの本の紹介があっておもしろそうなので読んでみました。
これは脳梗塞で倒れてリハビリをしている人に対して過剰融資した銀行の話なのですが、最初はフィクションだと思ったのですがネットで調べてみると実在の話をモデルにしていることがわかりました。


実は私も銀行と色々もめたことがあるのですが、そのもめた銀行がこの小説のモデルになった銀行です。
そしてこの本を読み進めて行くうちに自分が経験したのと同じような話がでてきます。
たとえば昔の契約に関して詳しい話を聞こうと思っても当時の担当者を絶対出してこなかったりとか、不必要なクレジットカードを何枚も発行したりなどです。
変額保険の販売や両建預金など顧客の不利益になることを売り上げをあげるために行ったことも社会問題にもなりました。
そのとき私はこの銀行は何かおかしいと感じました。
何かやましいことがあって隠しているのはないかと思ったのですが、現実に書類や印鑑の偽造を再三行っていたようです。
案の定その後金融庁からの厳しい行政指導を受けて単独では銀行としてやっていけなくなってしまったので他の銀行に吸収合併されました。
私がその銀行と関わったのはその末期だったので現場のモラルがかなり下がっていたように思います。


金融業は純粋にお金だけ扱うビジネスなので効率よくお金儲けができますが、欲深い人が多いのか暴走する傾向にあると思います。
今、アメリカで問題になっているサブプライムローンの問題も銀行は通常では貸す事のない相手に多額の融資を行っていました。


もちろん資金調達の方法として銀行は必要だと思います。
しかし、銀行はビジネスを行う上で高い倫理観を持ってビジネスする必要があります。
もしそのようにできなければ第3者によって厳しく監視する必要があるでしょう。
そうしなければ多くの経済的被害を受ける犠牲者が出ることになります。


この小説でも出てきますが、日本の司法がいかに機能していないかという事も問題です。
アメリカでは個人を守るために強制的に企業に情報開示を命令できますが、日本では企業は都合のいい情報さえだせばいいという不条理がまかり通っています。
また印鑑至上主義のため極端な話、盗まれた印鑑で契約書が作られても正式なものと認められてしまいます。


多くの人は銀行とつきあうなんてお金持ちだけの話だと考えるかもしれませんが、不動産を買うときは誰しもつきあう事になります。
そのときにこういう知識は知っておくべきでしょう。
結局、自分の身を守るには自分で勉強して危険を避けるしかないと思います。


この小説の主人公が言った言葉で「結局、天が成敗してくれましたね」というのが印象的でした。
あまりにひどいことをするといつか自分に返ってきて破滅してしまいます。
そう考えると少し心が和らいだような気がしました。