経営の未来

経営の未来経営の未来
ゲイリー ハメル

日本経済新聞出版社 2008-02-16
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本屋さんでふと目についたので少し立ち読みをしてみるとGoogleのことが書いてあるので久しぶりにビジネス書を買ってみました.
最近つまらないビジネス書ばかりにあたっていたのでこれもその類かとおもいきやかなりおもしろくて3日くらいで読んでしまいした。


この本のテーマは未来の企業はどのような組織になっているかを考えることです。
現代の企業は産業革命以降に確立された経営手法でいまだに運営されています。
しかし、最近の社会変化の速さに企業がついていけなくなっている状況があります。


身近な例で言うと、公衆電話はほとんどなくなりほとんどの人は携帯電話を持つようになりました。
また新聞や雑誌が売れなくなってきたのもインターネットが普及したからです。
さらに地球温暖化が進みどの企業も環境問題に取り組まざるを得なくなっています。


この様な変化の激しい状況に対応するためには今までの企業組織では難しい状況になっています。
ではどうすればいいのでしょうか?
著者は企業の民主化が必要であると主張します。
この考え方は私が以前Blogでちょっとふざけて書いた近未来CEO物語で描いた組織の形とかなり似ています。
自分がこんな未来になったらいいなと思ったことがこの本に書かれているのを読んでちょっとうれしかったですね。


現代の企業では現場からもっとも遠い一部の個人によって企業の舵取りが行われています。
こういう人たちは過去の成功体験に基づいて意思決定する傾向があるため、時代の変化にあった対応ができないことが結構あります。
私が今までお会いした経営者の方達も失礼ですが、世の中の動きに疎い方が結構いらっしゃいました。
もうこういう人たちだけで企業を経営していけるような状況ではなくなってきたのではないでしょうか。
著者が主張するようにこれからはもっと一般社員が企業経営に関与できるような組織でないと生き残れないでしょう。
それはかつて国家が専制君主制から民主国家になったように企業組織も進化すべきときにきているのかもしれません。
その例としてホールフーズ、WLゴア、グーグルなどの民主的な方法で経営している会社を上げています.
おもしろいことにこれらの先進的な企業を起業した人たちでMBA出身の人はいません。
MBAなど勉強するとかえって古い考え方に縛られてしまうのでしょうね。


しかし、著者はもっと民主的な組織があると言います。
それはオープンソースプロジェクトチームです。
Linuxはリーナストーバルスという個人がはじめたプロジェクトですが、今では多くの人が参加して巨大なソフトウェアを開発しています。
このプロジェクトでマネージャーはいません。
みんな自ら進んで作業を行いますが、誰かが強制して仕事をさせることはできません。
しかし、やっている人はやりたいからやっているのでいやいややっている人はいません。
有名なオープンソースプロジェクトとしてLinuxの他にもMozila FirefoxApache,日本からはRubyもありますね。


この話をするとそれは金を稼ぐための仕事じゃないからできることであって仕事はいやでもやらなければいけないんだという人もいます。
本当にそうでしょうか?
私のまわりにも生活のためにいやいや仕事をやっている人はいます。
しかし、そんな気持ちでやられているお客さんもかわいそうだし、やっている本人も不幸だと思います。
もし仕事でもオープンソースプロジェクトに参加している人たちのようなモチベーションを持てればどんなに素晴らしいでしょう。
これからの新しい組織のヒントがここにあるのではないでしょうか?


この本を読んでいていま自分が趣味でやっているJazzバンドを思い出しました.
Jazzの基本はセッションなんですが、はじめて一緒に演奏する人とその場でアドリブで演奏します。
私はまだそんな実力はないのですが(笑)、腕のうまい下手は一緒に演奏すれば一発でわかります。
そこにはもちろん年齢や学歴、勤めている会社は全く関係ありません。
いいフレーズを演奏できるかどうかが全てです.
こう考えるとバンドもこれからの新しい組織のお手本になるかもしれませんね。


この本はとりあえずは経営の本ですが、内容はその域を越えていると思います。
著者は具体的には書いていませんが未来の企業はもはや現代の企業とは似てもにつかないものになっているのではないかと予測しています。
それはひょっとしたらこんな組織かもしれません。


1 社長や管理職がまったくいない会社
2 社員は複数の組織に所属するのがあたり前
3 外国で働くことが簡単になる
4 一緒に働く人と仕事は選ぶことができる
5 いろんな職種を経験できる(エンジニアの次は会計士とか)
6 役職はもちろんのこと年齢や性別、学歴などは仕事をやる上では関係なくなり実力が全てである


こんな組織が果たしてちゃんと機能するのかはまだわかりません。
しかし、トップダウンで組織を運営していくやり方はもう限界なのはまちがいないようです。
「みんなの意見は案外正しい」という本にも書いていましたが、群集知をうまく利用できるような組織がこれから求められるのではないでしょうか。
そんな新しい組織に自分も関われたらいいなと思う今日このごろです。