失敗の本質
失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫) 戸部 良一 中央公論社 1991-08 売り上げランキング : 188 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
終戦記念日がもうすぐやってきますが、そんなとき過去の失敗を知るいい機会だと思います。
この本は第二次世界大戦でなぜあのような悲惨な敗北をしてしまったのかを組織論から分析したものです。
本の中では具体的な戦い(ノモンハン事件、ミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦)を対象に経緯を追いながら解説しています。
これらの戦いは全て悲惨な負け戦だったのですが、なぜそうなってしまったのか、その原因をあげています。
1 組織の統率がとれていなかった
例えばノモンハン事件では関東軍が勝手に暴走してソ連との戦いを拡大してしまいました。
他の戦いでも現場が本部の意向を無視して勝手に作戦を実行する傾向にありました。
このような下克上的な組織が組織としてバラバラな状況になってしまっていました。
2 コミュニケーションがとれていなかった
作戦には目的があります。
それが共有されていなければ敵に対して有効な攻撃はできません。
特に海軍と陸軍は全く連携が取れていませんでした。
3 グランドデザインがない
日本軍の作戦は場当たり的なものが多く、戦争全体をどのようにもっていくかというグランドデザインがないままヒステリックに反応して戦争に突入してしまいました。
4 論理的な議論ができない
アメリカと日本の国力を考えた場合、明らかに勝てる戦争ではありませんでした。
それをちゃんと数値として分析し議論しようとすると非国民よばわりされるような状況でした。
現実論ではなく精神論が支配する世界となってしまいました。
5 属人的組織で構成されている
日本軍は組織としてきっちりとした枠組みがなく、情緒的な人間関係で構成されていました。
したがって誰かが失敗しても自分のよく知っている人だと大目に見たり、重要なポストにつけたりしていました。
これを読んでいて私がいままで働いた日本の会社でも似たようなことがあることに気がつきました。
まず会社でマネージメントをちゃんとなされている状況を見たことがありませんでした。
私のいた会社がほとんど中小企業だったからというのもあるかもしれませんが、勤怠管理以外にまともな管理をしていた管理職というのに出会ったことがありません。
コミュニケーションがとれていないのもどこの会社でもあることですよね。
また、場当たり的というのもよく見る光景で長期的ビジョンに基づいた計画を見たことがありません。
会社の会議も論理的な議論がしづらい場所ですよね。
これと表現できないような空気が会議全体を支配していて、ちゃんと議論されることなく物事が決まってしまうことが結構あります。
会社組織での他部署との連携も個人的な人間関係が基本となっている会社が結構多いです。
そのような組織では中途入社の人にはとても働きづらくて仕事に支障が出ることもありました。
結論として思ったのは日本は敗戦後も基本的には変わっていないということでしょう。
私がソフト会社にいたとき、火を吹くプロジェクトが何回も発生しているのに誰も業務改善をしないのを見ていてこの人たちはバカなのかなと思ってしまいました。
その会社がだめだったからかもしれませんが、論理的な議論が通じる企業になかなかお目にかかれません。
人がいっぱい死んでいるのにまだ人を投入するということを繰り返す日本軍はデスマーチプロジェクトを無理やり進めるマネージャーを思い出させます。
日本は戦後、奇跡的な復興を遂げますがそれは戦争での失敗を教訓にした人が多かったからかもしれません。
今日本が低迷しているこの時期こそそのことを思い出す時なのかもしれませんね。