アップルを創った怪物 - スティーブウォズニアック自伝

アップルを創った怪物―もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝アップルを創った怪物―もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝
井口 耕二

ダイヤモンド社 2008-11-29
売り上げランキング : 1508
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

私は最初に買ったのはApple II J-Plusというコンピュータでした。


当時はPC-98が全盛でCPUは80286の16bitマシンが30万円くらいしていたころです。
Macはそのとき発売されたばかりでMac Plusが60万円くらいしてましたね。
私は当時お金がなかったのでAppleIIを中古で(確か3万円くらい)買った覚えがあります。


当時怪しげなソフトショップが結構あって海賊版をあちこちで売っていました。
Apple IIは当時はもう時代遅れのコンピュータだったのでソフトも情報もあまりありませんでしたが、海賊版屋でソフトを結構買いました(笑)
その中で好きだったソフトはフライトシミュレーターです。
今のものと比べると笑っちゃうほどちゃちなグラフィックでしたが、生で3Dグラフィックスを見たのがはじめてだったので感動しました。


あと、マシン語を勉強するソフトがありました。
Appleは6502というCPUを使っていましたが、アセンブラを実行するとレジスターへ値を入れたり取り出したりというのをグラフィックで表示してました。
最初に買ったというのもあると思いますが、いまでも一番好きなコンピューターです。


このApple IIを一人で開発したのがウォズニアックです。
彼は生粋のエンジニアでマネージメントなど他の仕事はいっさいやりたくないという変わり者です。
しかし、それだけ偏った人だからApple IIのようなすばらしいものが作れたのだと思います。


この本を読んで印象に残ったポイントです。


1 設計はできるだけシンプルであるべき
彼は設計するときにいかに部品数を少なくするかを一番に考えます。
20個のチップを使っていた回路を10個のチップでおさめることができたとき彼は一番うれしいそうです。
これは何事にも言えることだと思いますが、できるだけシンプルにするというのはいい仕事をするために重要な要素だと思います。


2 何事にも正直であれ
彼は何をやるにしても自分の良心に反することは絶対やりませんでした。
学生の頃、彼はブルーボックスという電話をただでかける機械を売っていました。
でも自分が電話をかけるときはちゃんとお金を払っていたそうです。
彼がブルーボックスを作ったのは単なるいたずら心と技術的好奇心からだったようです。


3 革新的な仕事がしたければ一人でやること
Apple IIは8つの拡張スロットを持っていましたが、ジョブズは2つで十分だと言って議論になったそうです。
ウォズニアックは拡張性にこだわったため彼の案が通りましたが、今のAppleジョブズがだめだといったら通らないでしょうね。
会社やチームで仕事をしていると自分の思い通りにはできないことが多いですし、本当に革新的なことは他の人が理解できないものです。
時間はかかるけれども自分一人でやれば人を説得しなくても自由にできます。


4 人生を楽しもう
彼はいたずらやジョークが大好きでした。
名誉やお金よりもいつも笑っていられる人生こそ彼が一番望んでいたものでした。


この本の中で一番面白かったのはApple IIとディスクドライブを開発する話です。
自分が使っていたコンピューターだから余計に面白かったのかもしれません。


確かに彼は経営者としての能力はなかったと思います。
Apple IIIというビジネス向けに開発されたコンピュータがありましたが、商業的には失敗したものでした。
その失敗も他人事のように書いていますが、経営者だったら自分の責任を感じるものだと思います。
しかし、彼は自分が幸せになるために仕事をしていたからこそ革新的な製品を作り出せたのでしょう。
そしてジョブズと一緒に仕事をしたからAppleのようなすばらしい企業ができたのだと思います。
そんなウォズニアックを見ていると自分の人生は自分が決めたのならどんな生き方をしてもいいんだよと言っているようです。
ちまたの自己啓発の本はこう生きるべきと書いているものが多いですが、どう生きるかなんて本当は自分で考えて決めていくことなんだと思います。
お金や地位を得ても人によって何が幸せなんかなんて違いますからね。