チーズを探さなければいけない時代

今年から体調不良で一時休業していたのですが、なんとか回復してきたので今月からいろんな方にあって営業がてらいろんな話を聞きました。
やはり不景気の影響は深刻で特に中小のIT企業の状況は非常にやばい状態です。
しかし、皆さんの話を聞いていると環境が変わっているのに今までのやり方を変えようとしていないのが気になりました。


金融危機のために突然厳しくなったのもあるのですが、IT業界に関して言うとビジネスモデルの変化や技術革新などで従来のやり方がじょじょに通用しなくなっていたのではないかと思います。
例えば、サーバーやネットワーク機器を売るベンダーは機器の低価格化と市場の飽和によってすでにビジネスが厳しい状況になっていました。
また、ソフトウェア開発は海外へのアウトソーシングやERPなどのパッケージの普及、SaaSなどのサービスとしてソフトウェアを提供するサービスの登場により海外の技術や労働力に依存する割合が増えてきています。
そのため、日本のITエンジニアの技術力が年々低下している傾向にあります。


さらに日本のIT業界はゼネコン構造になっています。
大手数社のSIベンダーがほとんどの大型案件を受注するため、中小のベンダーは下請け企業に甘んじるしかない状況でした。
しかし、このような構造は顧客にとってコスト高となってしまいます。
いままでは顧客企業も少々高くても安心できる大手に頼む傾向にありましたが、この不景気でこれからコストにシビアになるでしょう。
また日本の大企業は製造業が多いため、ITゼネコンが受注できる大型案件は今は極端に少なくなってしまいました。
そのため中小のIT企業にほとんど仕事が落ちてこないという状況になっています。
また人材派遣をメインにやっているところも、派遣切りなどの影響でエンジニアが余っている状況のようです。


IT中小企業の社長さんたちは急に景気が悪くなったと言われますが、こうなる前提条件は少しずつ作られていました。
それが金融危機をきっかけに一気に表に出てきただけです。
しかし、未だにかつてのやり方でこれからもやっていけると思っている人が結構います。
今は不景気だから仕方がないと思っているようですが、景気がよくなっても厳しい状況が続く可能性が高いと思います。
なぜならば顧客はよりコストにシビアになり、仕事自体が減っていくからです。
例えば、アメリカがこれから莫大な借金を返していかなければいけないのでモノが売れなくなるでしょう。
それはモノを輸出して稼いでいる日本には致命傷です。
そういう時代にこれからどうすべきか考えるのが社長の仕事だと思います。


ではこのような状況で中小の日本のIT企業はどうすればいいのでしょうか?
自分なり三つほど考えてみました。


1 違うマーケットに目を向ける


ITゼネコンから落ちてくる仕事を当てにするのではなく、違う顧客をみずから開拓する必要があります。
例えば、日本の中小企業はお金にならないからとITベンダーが相手にしなかったマーケットでした。
しかし、これから中小企業も効率化のためにITを整備していかないと生き残れない時代なのでニーズは結構あると思います。
そのマーケットに対して大手企業に対するやり方とは違う方法でビジネスを考えていく必要があります。



2 差別化する


日本のSIerソフトハウスなどはどこも特色や専門性がなくなんでもやります的なビジネスをやっていました。
しかし、これからは他がやっていないことをやったり、どこもできないような専門性を持つなどの差別化が必要になります。
また、特許を取って新製品を開発するというリスクも取っていかないと生き残れない時代になるでしょう。
結構大変な時代ですが、チャンスのある時代でもあると思います。



3 世界のマーケットをめざす


これから日本は人口が減っていきます。
これはマーケットが小さくなっていくことを意味します。
したがって、長いスパンで見ると日本だけでビジネスをやるということはとてもリスクが高いということになります。
しかし、ITビジネスは意外に簡単に国境を越えることができます。
インターネットを使えば簡単に海外向けビジネスを始められます。
一番の壁は言語でしょう。
とりあえず使っている人の多い英語、中国語、スペイン語をカバーすれば16億人のマーケットがあります。
言語が違うのは大変ですが、バイリンガルな人材を使うなどすればできることは結構あると思います。



今まで日本は経済大国だったので、他と同じようにやっていけば食べていける時代が長く続きました。
しかし、いまやGDPの伸び率も先進国の中で日本だけが毎年減少しています。
このような状況では今までのやり方ではジリ貧になるのは火を見るより明らかです。


もうチーズは今まであった場所にはありません。
これから新しいチーズを探しに行くときだと思います。

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