結局自分たちが待遇を悪くしているのか

ITProの記事「だからエンジニアは報われない」はエンジニアには考えさせられる内容です。


日本人はどこか忍耐を美徳とするところがあり、お金の話をすることははしたないと考える傾向があるため待遇が悪くても会社をやめずに我慢する人たちが多いようです。
だから、企業も待遇改善をしないのでしょう。
以前、私が外資系に勤めていたとき、海外の本社に出張でいく機会がありました。
そのときオーストラリア人のCFOが直接私に待遇に不満はないか聞いてきました。
こんなことは日本の企業に勤めていたときは一度もありませんでした。


結局、こんな待遇の悪い企業を作ってしまったのは私たち自身なのかもしれません。
経営者にとっては文句も言わず我慢する社員をマネージメントをするのは楽でしょう。
記事の中で半導体のエンジニアが間接部門に飛ばされていることを書いていましたが、こういう人たちは会社をやめて別の会社を探すか、起業したほうがいいと思います。
いまだに会社を家族のように考えているのでしょうが、結局は会社は利益追求団体にすぎません。
日本の企業は解雇しないといいますが、給料カットや新規雇用の抑制など間接的には解雇と同じことをやっています。
もともと資本主義の原理で企業は運営されているのですから、普通の経営者だったら従業員より組織の維持を最優先するでしょう。


少なくともエンジニアは専門スキルと今までの経験があるのですから、だめな会社にしがみつくのはやめて自分の雇用は自分で守るという気概をもつべきだと思います。
そのためには会社に頼らない人生のための戦略が必要です。
その戦略でポイントは次のようなものが考えられます。


1 哲学を持つ


私はこれが一番最初に考えるべきことだと思います。
つまり、自分はなんのためにこのビジネスをやっているのかを明確にすることです。
ビジネスですから利益をあげるためにやっているのですが、実はそれは本当の目的ではありません。
企業は人々に求められるから存在するのであって、自分の利益だけ求める企業は顧客からそっぽを向かれます。
本当の目的は何かと言うと相手を幸せにすることです。
 例えば、ITは効率アップや経費削減のツールとして企業に導入されましたが、ではそれを使う人たちが幸せになったかというとそうではありませんでした。
システムが使いづらかったり、維持管理するために膨大な手間やコストがかかるなど現場のストレスの元になっているケースが結構あります。
さらに、業務を自動化したことによって人間がいらなくなりリストラの道具になってしまったという面もあります。
そうではなくITの本当の目的は人々を退屈な作業から解放し、より創造的な仕事ができるような環境を作ることではないかと思います。
なので効率化や自動化だけでは中途半端で、それから開放された人たちをサポートするシステムも同時に必要なのだと思います。
こういう哲学は短期的な利益のみを追求するなら必要ありませんが、長期にビジネスを継続するためには必要です。
 あるビジネス書にあったエピソードである教会の工事に参加している石工にあなたの仕事は何ですかと聞くという話がありました。
ある石工は石を削ることですと答え、別の石工は教会を作っていますと答えました。
その本では教会を作ってますと答えた石工が職人としては優秀だとしていましたが、私なら多くの人の心を癒すための教会を作っていますというふうに答えてほしいなと思います。
なぜならどんな仕事も人を幸せにするためにやっていると思うからです。


2 世の中の動向に敏感になる。


最近は社会が変化する速度が速くなり、ものごとがすぐ陳腐化する傾向にあります。
例えば、ITの場合PCが衰退しつつあり携帯電話や情報家電へ需要がシフトしています。
なのでこれから必要とされる技術は組み込み技術や無線技術、ウェブ技術などになるでしょう。
これからはエンジニアはそんな動向を素早くキャッチし自分のスキルをアップデートしていかなければ仕事がなくなってしまう時代になりつつあります。。
場合によっては今まで培ったスキルを捨てることも出てくるでしょう。
しかし、古い地位に安住しているといずれ時代遅れとなり使えない人になってしまいます。


3 自分の所属する企業の状況を把握する


自社の決算書を見れば、利益や経費など大雑把なところを確認することができます。
後は社内にいればいろんな内部情報が知ることができると思いますので、何で儲かっているかや損しているかなどがわかると思います。
株式公開企業であれば有価証券報告書などでより詳しい収支報告を見ることができます。
それらの情報を総合して自分の会社の現状や将来についてかなりの部分を知ることができるでしょう。
これは会社が危なくなったから逃げ出すということではなく、自分と会社がWin-Winになるためにはどういう関係をもつべきかを考えるということです。
そして自分と会社の両方にとってメリットになることを提案したり、特定の技術やノウハウを勉強したりといった行動のきっかけになると思います。
己を知るということはどんな行動をするときでも重要なことだと思います。


4 世界的な視野で考える


ビジネスのグローバル化の結果、海外での動向がすぐに国内のビジネスに影響するようになってきました。
例えば、いまネット広告が広がったためアメリカの新聞社やラジオ局が業績不振でどんどんつぶれていますが、これから日本も同じ状況になっていくでしょう。
また、中国やインドが安い人件費を武器に業務のアウトソースを受けるようになって先進国の仕事がどんどんなくなってきています。
世界は今やビジネスに関しては国境がないに等しい状況になっています。
そういう状況で日本国内でのビジネスをどうすべきかということを考えていく必要があります。


5 プロとしての自覚をもつ


お金をもらって仕事を引き受けるかぎりは依頼されたことはちゃんと約束通りやる必要があります。
そして、手を抜かず最高の品質をめざして仕事を完成させようとすべきでしょう。
そうすれば自分のスキルアップにもなりますし、より高付加価値の仕事を受けられるようにもなります。
例えばITシステムはいまや大規模で複雑化してしまい、なおかつ一瞬たりとも止められないものも多く、扱うにはリスクの高いものになってしまいました。
しかし、時にはある程度のリスクを引き受け失敗したときは潔く責任を取る覚悟で仕事をすることも必要です。
なぜならばそのような仕事をやったあとは格段にスキルがあがっていることが多く、エンジニアとしての価値もあがるからです。
もちろん無謀なリスクを取ることは仕事としてやるのでよくないですが、常にチャレンジ精神を持って挑戦していく姿勢はいつまでも忘れたくないものです。


これから日本は製造業など今まで国を支えていた産業が衰退していくでしょう。
その縮小均衡の状態で古い既得権益にしがみついていれば定年まで逃げ切れる人も多いかもしれません。
しかし、新たな新天地をめざして一歩踏み出して行く方が人生としてはおもしろいと私は思います。
もう日本では会社に人生を預けるのはやめて自分自身の足で歩き始める時期にきているのではないでしょうか。
それはそんなに生やさしいことではないですが、より自分らしく生きていけるような気がします。