マグネシウム文明論

マグネシウム文明論 (PHP新書)マグネシウム文明論 (PHP新書)
矢部 孝 山路 達也

PHP研究所 2009-12-16
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仕事で忙しくほとんどブログを更新できませんでした。
仕事が片付いたあともいろんな方の飲みのお誘いをこなしていたら、あっという間に年末になってしまいました。
時間がたつのは早いものですね。


会社帰りに何気なく本屋さんの新書コーナーを見ていたら「マグネシウム」という言葉が目につきました。
なぜか自分にはいい本を見分ける直感があるみたいで、内容を読んでみるとすばらしい内容で久しぶりにわくわくしました。


この本ではマグネシウムを使った石油にかわるエネルギー技術について解説しています。
著者はレーザー核融合の研究者なのですが、レーザー技術を使えばマグネシウムに太陽エネルギーを蓄積して利用できることを考えだします。
マグネシウムは化学反応で石油ほどではないのですが熱を発生させることができてCO2を出しません。
そして海の水に1%ほど含まれているらしく、そこから取り出せばほぼ無尽蔵に利用できるらしく資源のない日本には願ってもない技術です。
なおかつ海水からマグネシウムを取り出す過程で淡水化もできるらしく、水不足も解消できるそうです。


読んでいて疑問だったのが、いくらレーザーといっても元は太陽光のエネルギーを使っているのでその程度のエネルギーで石油に変わるエネルギー源になるのかと思ったのですが、今の石油の使われ方が効率が悪いのかもしれません。
また、マグネシウムはかつてカメラのフラッシュライトに使われていたように激しく反応する物質なので安全性も大丈夫かなと思いました。
ただ、このあたりは技術が進歩すれば解決できるような気がします。


私が読んだかぎりでは代替エネルギーとして水素や原子力より現実的だと思いました。
全てがマグネシウムにはなかなか切り替わらないかもしれませんが、CO2削減にはかなり有効なのではないでしょうか。


著者は東京工業大学の教授なのですが、日本には珍しいタイプの方です。
大学教授で新しいアイデアを色々考えてそれを会社を作ってビジネスにまで発展させている人はなかなかいません。
日本の大学教授は何もしなくても一生クビになることはないですからね。
そういうところが好感がもてる方だなと思いました。
そして、こういう新しいことを考える人は日本ではたたかれます。
マグネシウムの話をしてもなぜ今まで誰もやってなかったのかとか本当なのかという疑いの目で見られたそうです。
そして、欠点をあげつらい研究者のやる気をなくするような人たちが日本には多いとのことでした。
私も経験がありますが、日本は新しいアイデアを育てる文化がありません。
私も新しいアイデアを考えても支持してもらったことがほとんどなかったでしたね。
先進国に追いつこうと海外の知識を取り入れることしか考えない劣等国のくせが未だに抜けていないのでしょう。
しかし、日本からもこういう人が出てくるようになったということは少しづつ変わってきているのかもしれません。


また著者は一般の人にも科学技術に興味をもってほしいと考えています。
ほとんどの人は学校で勉強するくらいで社会人になったら科学のことなんか興味を持つ人はなくなってしまいます。
それは受験勉強で科学が嫌いになってしまうからなのでしょう。
日本の受験制度はそう考えるとかなりの損失を生み出しているのでしょうね。
科学に限らず英語や歴史など先人の叡智を学ぶことは人生を豊かにします。
それを嫌いにしてしまう制度の存在価値はなんなのでしょうか。
著者のような優秀な人ほどそのように考えるのでしょう。
私は科学が結構好きなので未だに数学や物理の本をよく読みます。
SF小説を読んでいるような感じで夢を感じることができるから好きなのかもしれません。


環境問題は人類が存続するために解決しなければいけない重要な問題です。
それを解決する画期的なアイデアを実現できる仕事ができるなんて、著者はなんてうらやましい人だろうと思いました。
自分もそんな仕事ができるように努力したいと思いました。