ミラーニューロンの発見

ミラーニューロンの発見―「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学 (ハヤカワ新書juice)ミラーニューロンの発見―「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学 (ハヤカワ新書juice)
マルコ イアコボーニ Marco Iacoboni

早川書房 2009-05
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ミラーニューロンとは脳に存在する細胞で別名「ものまね細胞」とも呼ばれています。
ミラーニューロンはイタリア パルマ大学のジャコーモ・リッツォラッティによって偶然発見されました。
彼はマカクサルという小型サルの脳の働きを研究しているときに、自分がカップを握ったりするとサルの脳のある部分が活性化することに気がつきます。
よく調べてみるとどうやら他者の動作を自分の脳でシミュレートしているらしく、あたかも自分が行ったような反応を見せていることがわかりました。
そして、それは動作だけにかぎらず言葉を話したり他者と気持ちを共有したりするための基本となっていることがわかってきました。


私は脳にとても興味があってその関連の本を読みましたが、ミラーニューロンほど驚いたものはいままでありません。
なぜならば、いままで自分は自律した個人だと思っていたのが、人間の脳は他者がいることが前提となるような構造になっていることがわかったからです。
デカルトから続く西洋の考え方は個人は自律していて、それが自由の基本であるとしています。
しかし、本当は人間は一人で独立して生きていける生物ではなく、他者との関係がどうしても必要なのです。
これは欧米人には受け入れがたい考え方かもしれません。


しかし、ミラーニューロンの働きがこれから解明されていくといろんな応用ができるようになるかもしれません。
この本では自閉症の治療や政治、広告などへの応用について書かれています。
例えば、広告ではアンケートでは人気の広告もミラーニューロンが活性化していない場合が多いそうです。
ミラーニューロンは共感の脳細胞でもあるため、どんな広告を出せば人々の共感を呼ぶのかということも将来わかるようになるかもしれません。


しかし、人間やある種の動物にはなぜミラーニューロンがあるのでしょうか。
それは一匹だけでは生きていけないから群れでうまくやっていくために発達したのかもしれません。
そう考えると人間は集団生活に慣れているはずなのに、なぜ会社などの組織というのは居心地が悪いのでしょうか。
それはおそらくミラーニューロンを活性化しないことばかりやっているからだと思います。
経営者は働く人たちが何に共感するのかを考えながら経営すべきなのでしょうね。


インターネットや携帯電話が普及した現代で人々がコミュニケーションすることが簡単になりました。
しかし、最近人々が共感することがあまりないのではないでしょうか。
自分さえよければいいという個人主義が横行し、人々が協力し合うことが少なくなってしまいました。
しかし、進化の過程でミラーニューロンが発達したのは人間は一人では生きていけない動物だからです。
これからはもっと人と共感できるような生き方ができればいいなと思いますね。