ソーシャルメディア革命

まずはこちらのビデオをご覧ください。





「Socialnomics(邦訳 つぶやき進化論)」のプロモーションCMですが、ソーシャルウェブの状況が分かりやすく解説されています。
Facebookは世界最大のSNSサイトでいまや5億人以上のユーザーが登録しています。
ビデオでもあるようにこれは中国、インドにつぐ規模です。
日本ではいまいちなFacebookですが、それでも現在約160万人が登録してクリティカルマスを超えようとしています。
これだけの人たちにネット経由でリーチできるということはどういう意味があるのでしょうか。


「みんな集まれ」という本ではソーシャルネットによって多くの人々を動員して物事をなしとげることができるようになったことが書かれています。
この本の中にある人がタクシーに携帯電話を忘れた時のエピソードがあります。
その後、携帯電話はある人に拾われるのですが、拾った人は勝手に使用して持ち主が抗議しても返してくれなかったそうです。
それから、持ち主はその事件の詳細をネットに書き込みます。
ネットでそれを読んだ人たちは拾った人の住んでる場所や経歴を調べあげ、最後には警察まで動かしてしまいます。
結構怖い話ではありますが、この話のポイントは多くの人が共同して何かをするということがソーシャルウェブで可能になったということです。
いままでは国や企業などの組織がないとそういうことはできませんでした。
しかし、そういう組織がなくても人々が共同して何かを達成することができたことがエポックメイキングなことだったのです。
ただ、これは新しいことではなくてオープンソースの世界では普通に行われていたことでした。
それが一般社会にも広がりつつあるというのがソーシャルウェブのインパクトなのだと思います。


このように見ていくとソーシャルネットというのはこれからの社会を大きく変えていく可能性があるのではないかと思います。
まず、変わると考えられるのは教育だと思います。
いまではMITのオープンコースウェアのような大学のすぐれた教材が誰でも無料または安価に手に入るようになりました。
講義のビデオもありますし、電子書籍によってテキストもダウンロードできるようになりました。
わからないことがあればGoogleで検索すればたいていの質問の回答は得られます。
しかし、人とのコミュニケーションというピースが欠けていました。
つまり、専門の先生や同じことを学ぶ友人と議論をすることが今まではできませんでしたが、ソーシャルネットによってそのような人たちを見つけることが可能になりました。
こうなると学校の存在意義はなんなのかということになると思います。
これからの学ぶ場というのは先生が生徒に一方的に教えるのではなく、ある時は教えそしてある時はWikipediaのように多くの人達の知から学ぶシステムになるのではないかと思います。
なので入試なんていうばかな選別方法はなくなり、学びたいことを好きなだけ学べる環境が出てくるのではないかと思います。
ただ、医師や弁護士などのプロフェッショナルな職業を目指す人は専門の教育を受けるべきでしょうが、それも学びたい人はいままでより遥かに安いコストで学べる環境を作れると思います。


こういうと会社で人を雇うときどうしたら人を判断できるのかと言う人もいるでしょう。
しかし、ソーシャルウェブは企業も変えていくと思います。
いまは企業は学歴や職歴、資格などで人を判断していますが、これがいかに不確かな指標か経験された方は多いのではないでしょうか。
これからはソーシャルウェブで人を評価する時代になるでしょう。


まず、ブログを読めば(ある程度の数のエントリーが必要ですが)その人がどういうことを考えているかが理解できます。
そしてTwitterだとよりリアルタイムな状況もわかりますし、SNSなどでやりとりすることによってその人がどのような人間関係を築いているかわかります。
外資系企業でよく行われているリファレンスという第三者による評価を集めるのも簡単になるでしょう。
さらに、開発したソフトウェアや美術的な作品など自分が今まで制作した成果物をオープンソースやクリエイトコモンズなどの形で公開することも能力を証明する方法のひとつでしょう。
これは今までの履歴書による採用より確実に人を判定できる方法です。


最近、ネット上での個人のブランド化ということが言われるようになりました。
「ネットがあれば履歴書はいらない」という本にも書かれていますが、ソーシャルウェブの拡大によって誰もが自分をプロモーションしなくてはいけない時代になるつつあるのだと思います。
逆にいうと企業もソーシャルウェブで個人やコミュニティと付き合っていかないとビジネスができなくなるということです。
だから企業も自分をソーシャルウェブでプロモーションし、顧客とコミュニケーションしなければいけない時代になりつつあります。
しかし、ソーシャルウェブでのつながりは企業よりもコミュニティの方が多くなる可能性があります。
すでにLinuxRubyなどのオープンソースの世界ではソーシャルウェブ的つながりで多くのプロジェクトが成果をあげています。
つまり気の合う人達がグループになって何かを成し遂げるためのプラットフォームにソーシャルウェブはなっていくのではないでしょうか。


ソーシャルウェブは国家さえ変えつつあります。
オバマ大統領はFacebookTwitterを使って支持を集めました。
選挙資金もPaypalを使って個人献金を募って、かつてのパーティーを開催して企業献金を集めるようなことはしませんでした。
おそらくソーシャルウェブがなければ白人以外の大統領が生まれることはなかったでしょう。
いままで政治では一般の人たちが意思表明をする手段は選挙しかありませんでした。
しかし、ソーシャルウェブによって民衆が投票以外の手段で政治に物申すことができるようになったのは大きいと思います。
政治では特定の利益団体の意思が働きやすい場ですが、ソーシャルウェブによってそれが抑制される効果があると思います。
また、国際的な国家の関係も変わる可能性があります。
世界では非人道的なことを行っている国が数多くありますが、ソーシャルネットで呼びかけることによって抑止力になることができます。
このようにソーシャルウェブは大きな力を生み出すことができますが、適切に使わないと害悪をもたらす可能性もあります。
例えば、ナショナリズムを煽って国同士の争いの原因になったり、個人を誹謗中傷して人権侵害をおこなったりなどマイナスの側面も考える必要があるでしょう。
結局は一人一人が良識をもって行動できるかが重要なのだと思います。


絶対君主制の時代に生きた人たちは私たちが住む民主主義の世界なんて想像もできなかったでしょう。
なのでソーシャルウェブが一般的になった世界がどういう世界なのかなかなか予測できないのも無理はありません。
しかし、どんな時代にもある方向に変わっていきました。
それは偏見や差別のない自由で平等な世界をめざすことです。
現代の日本は民主主義国家と言われますが、年間3万人も自殺している状況を見ると理想とは程遠い状況だと思います。
ソーシャルウェブによって社会が変わり、多くの人々が幸福に暮らせるような時代になってほしいと思いますね。


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