デフレのITビジネス

先日、家電量販店へプリンターを買いに行ったのですが、あまりの価格下落に異様な印象を受けました。
プリンターだけではなくあらゆる家電製品のここ最近の価格の下落は加速度を増しているような印象を受けます。
これはIT製品がゆえの結果なのではないかと思いました。


どういうことかというとIT製品というのは指数関数的に性能が上がるからです。
有名なムーアの法則では「集積回路上のトランジスタ数は18ヶ月ごとに倍になる」とされています。
それを証明するかのようにCPUのスペックは以下のような経緯をたどってきました。


・1971年     4ビット
・1970年代前半  8ビット
・1970年代後半 16ビット
・1980年代   32ビット
・1990年代   32ビットが主流、サーバ用などに64ビットRISC
・2000年代   64ビットが主流
・2000年代後半 64ビットマルチコア


(引用 マイクロプロセッサ(パソコン用CPU)の歴史http://www.kogures.com/hitoshi/history/pc-cpu/index.html


これを見るとほぼ10年ごとに次世代CPUに世代交代が起こっています。
そしてCPUのビット数が上がると扱えるデータ量が指数倍に上がります。


4ビット->8ビット 16倍
8ビット->16ビット 256倍
16ビット->32ビット 65536倍
32ビット->64ビット 4294967296倍


このようにCPUの性能向上の速度が加速しているのがわかります。
(ただ、最近はムーアの法則の限界によってマルチコアの方向に変わってきています。)
これはCPUだけについての話ですが、メモリーやディスク、ネットワーク帯域、ソフトウェアの機能なども同様の状況が見られます。


これは何を意味するかというと製品の陳腐化が激しくて、価格下落が起こりやすいマーケットだということです。
最近は中国やインドなどの新興国の台頭などもあり価格下落がさらに進んでいます。
経済の需要と供給の法則からビジネスでは希少性のあるものに対して高い価格がつきます。
しかし、IT製品はいまや空気や水のように大量に供給されているため価格が下がってしまったのだと思われます。


こう考えると高コストの日本でITビジネスを行うことはこれから難しくなるでしょう。
その証拠に受託開発や派遣といったビジネスがだんだん成り立たなくなってきていますが、それはソフトウェア開発は中国やインドへアウトソースされているのも理由の一つです。
また、アメリカの製品を日本に持ってくるというビジネスもSaaSやクラウドなどによって日本の拠点がなくてもビジネスが可能になりつつあります。
さらにITゼネコンと呼ばれていた体制も政府の財政赤字や大企業のグローバル化などによりほぼ崩壊している状況です。
こう考えるとガラパゴス化していた日本のIT業界はかなり崖っぷち状況にあると思われます。


このように絶望的な状況ですが、いくつか希望の光も見えています。
次回はそれについて書きたいと思います。