コンテンツビジネスの未来。

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photo credit: Pedro Vezini via photopin cc


買った電子書籍は自分のものではなかった


日本でもアマゾンKindleのサービスがはじまりました。
これからはタブレットなどで簡単に本が読める時代が来るとおもいきやちょっと雲行きがおかしくなってきました。
実はアマゾンで買ったKindleの電子書籍が自分のものではないということをご存知でしたか?
Amazonの規約では以下のようになっています。

Amazon.comの規約


Kindleコンテンツの利用について。
Kindleコンテンツのダウンロードや料金の支払いにあたって、コンテンツプロヴァイダーはユーザーにコンテンツの視聴や利用に関する非独占的な権利を付与します。
これは、Kindleを含め規約で許可されたサーヴィスやアプリケーションのみに適用され、Kindleストアが定めたKindleやその他対応端末での非商用的な娯楽目的の利用のみが認められます。
(以下重要!)
Kindleのコンテンツはライセンスされるのみで、コンテンツプロヴァイダーからユーザーに販売されるものではありません。
ユーザーがアマゾンの規約に違反した場合、本規約におけるユーザーの権利は自動的に取り消されます。
この場合、ユーザーのKindleストアやKindleコンテンツの利用やアクセスは停止され、アマゾンは返金等は行いません。


引用元:Kindleで購入した電子書籍は、実はユーザーのものではない



つまり、Kindleを買った顧客は使用権を与えられるだけで、それも提供者によって取り消されることがあるということです。
実際に引用元の記事では電書データをAmazonによって消された人がいることを伝えています。
(後でまちがいだとわかって復旧したみたいですが。)
Amazonなど電子書籍を販売する企業はこのことをもっと顧客に知らせるべきでしょう。
おそらくほとんどの顧客は本が電子媒体になったくらいにしか考えていないと思います。
そのことをちゃんと説明しないと顧客は企業に不信感を持つようになるのではないでしょうか。


デジタルコンテンツ過剰防衛の歴史


企業が顧客の買ったコンテンツを消すなんて普通はおかしいのではないかと思いますが、しかしよく考えるとアマゾンがなぜそんな規約を設けているか理由はわかります。
それは、デジタルデータは無限にコピーできるため、誰かが海賊コピーを作成してばらまいてしまうとアマゾンや出版社のビジネスが成り立たたなくなってしまうからです。
そこでDRMや法律によって規制をかけようしますが、今までの歴史を見るとそれが成功したとは思えません。
かつてSonyはメモリースティックウォークマンコピーコントロールCDでコンテンツに強いコピーガードをかけましたが顧客に受け入れられませんでした。
また、Sonyはリブリエという電子書籍をAmazonにさきがけて出していました。
その時私は買おうと思って調べたのですが、買った書籍データが2週間で消えるというのを見てあきれてしまいました。
貸本のイメージで売っていたようですが、そんなものが売れるわけがありません。
一方、AppleiPodはMP3を扱えたしCDリッピングをやりやすくしたのでシェアを拡大しました。
人を見たら盗人と思えというやり方ではビジネスはうまくいかないということなのでしょう。


デジタルコンテンツビジネスの限界と未来


そう考えると、本や音楽、映画などデジタルデータになってしまうと簡単にコピーできるのでデータを売るという商売自体が無理なのではないかと思います。
そもそも資本主義は希少なものをどう分配するかという仕組みなので無限に増やせるものは価値がなくなってしまいます。
そこら辺に落ちているものに誰もお金なんか払わないでしょう。
かといって、ダウンロードしたら罪に罰するなんてことをやったらコンテンツ自体が広がらない状況になって、結局社会にとってマイナスの効果を与えることになるのではないでしょうか。


データがほぼコストゼロで複製、伝送できる時代には新しいビジネスモデルを考えるべきだと思います。
その一つの方法として希少性を付加する方法があります。
どういうことかというと、コンテンツ自体は無料で配ってそれに付加したサービスを有料で提供します。
例えば、音楽の場合は楽曲を無料で公開してコンサートやグッズ販売でマネタイズしているアーティストが増えています。
映画のスターウオーズではジョージルーカスは映画放映の利益はすべて映画会社に渡してキャラクターグッズ販売の権利を代わりに得ました。
これから書籍も電子書籍データは無料で配って講演会や映画化権利、コンサルティングなどでマネタイズしていったほうがいいのではないでしょうか。


私は結構電子書籍に期待していましたが、結局提供者の論理で決められてしまったことに正直がっかりしました。
私はいい本は自分のものとして持っていたいので、これからは紙の本を買って自炊しようと思います。