ITビジネスモデル 1

 もうこの業界で働き始めて15年になります。IT関係のいろんな仕事をしてきましたが、今考えるとあっという間に経ってしまった感があります。しかしいまだ仕事でやったなという達成感があまりありません。それはなぜなんだろうと考えた結果次の3点をクリアしたときに達成感が得られるのではないかと思いました。

・ 妥当な利益を得ることができる仕事である
・ 現場で働いているメンバーにとってやりがいのある仕事である
・ 顧客が提供された製品またはサービスに満足している

なかなかこの3点を満足することは難しいのですが、企業としては最初の利益を上げるというところは最低クリアしないといけない点ですね。

ということで儲かるビジネスモデルについて今回は考えてみようと思います。IT業界で利益を上げるにはどうすればいいのでしょうか?
IT業界もいろんな職種があります。ざっと考えただけでも

・ ソフトウェア開発
・ システムインテグレーション
・ ITコンサルティング
・ プロバイダー ASP
・ 製品ベンダー

といった感じでしょうか。もっと色々あると思いますが、とりあえず私の経験した範囲で考えてみようと思います。

まずは最初のソフトウェア開発を取り上げてみます。

1 ソフトウェア開発とは
 ソフトウェア開発はパッケージ開発と受託開発がありますが、まずは受託開発で考えてみましょう。受託開発では顧客から開発案件を受注してソフトウェアを作ります。設備投資はコンピューター以外は必要はありませんが、労働集約型業務のためスキルのあるエンジニアが必要です。

2 ソフト開発の仕事の中身
 ソフトウェア開発は要求分析->設計->実装->テストの各工程を経て納品物が作成されます。最近は開発期間が短くなってきているため、スパイラル方式と呼ばれる短いスパンでリリースする手法が主流になってきています。
 また昔はプログラム言語だけで開発できましたが、最近はGUIを絵を描くように作ったりプログラムコードを自動で生成するツールを使わないと作れなくなってきています。
 エンジニアはプログラム言語はもとよりデータベース、通信、業務プロセスなどに精通する必要があり、上級SEになるとプレゼンテーション能力や交渉能力、プロジェクトマネージメント能力を求められます。したがって個人の能力の差によるパフォーマンスの違いが大きくスキルが属人的になる傾向にあります。

3 ビジネスの性質
 受託ソフトウェア開発は毎回製品開発を行っているような仕事です。パッケージソフトウェアであれば大量生産のようなスケールメリットがありますが、基本的に顧客が決まっている受託開発では収入の上限がほぼ確定されてしまいます。 さらにソフトウェア開発では基本的に納品時まで入金が発生しませんのでキャッシュフロー的にはあまりいいビジネスとはいえません。実際にはバージョンアップやメンテナンス等でキャッシュを確保しているのが現状です。

 また受託ソフトウェア開発を受ける場合は規模とコスト管理が重要になります。受託開発案件はある程度の規模(1億円以上とか)がないとペイしません。なぜならばプロジェクトを立ち上げる場合のオーバーヘッドが色々費用としてかかってくるからです。
 例えばプロジェクトではエンジニアだけでなくプロジェクトマネージャーやテストを行う人、ウェブページのデザインする人など様々な人々が関わってきます。また見積りを行う工数もかなりかかるでしょう。会社によってもかかってくる費用が違ってくるでしょうから自分の会社はどれくらいかかるか事前に知る必要があります。
 次にコスト管理ですが、ソフトウェア開発では人件費が主なコストです。誰がどれくらいの時間何をしていたかを常にモニターすることによってコストを予算内におさえなければいけません。また人件費以外にも移動費や通信費、消耗品関連などプロジェクトでかかった費用を詳細に管理しておく必要があります。
 コスト管理を行う上での予算額は見積りで確定しますが、この見積りが簡単ではありません。受注時には設計すらやっていませんから何を作るのかわからないまま費用を決めるという恐ろしいことがこの業界では行われています。この見積りをどれだけ正確に行えるかがプロジェクトの成否を分けるポイントになります。

4 儲かるためにはどうすればいい?
 受託ソフトウェア開発の仕事は成功することが難しい業務です。しかし成功したプロジェクトも数は少ないですが存在します。では成功するプロジェクトはどのような特徴があるのでしょうか?

・ 顧客の経営層を巻き込んでいる
 顧客にシステムを導入する場合、必ずといっていいほど顧客企業の業務プロセス変更が発生します。しかし現場担当者はやりなれた方法を簡単に捨てようとはしません。外部の人間が彼らの仕事のやり方まで口を出すと余計に反対されることが予想されます。
 まずは経営者が積極的にシステム導入にコミットするよう確約を得ることがプロジェクト成功の必要条件です。もし経営者がそのことに理解がなければ受注しないほうがいいでしょう。
・ 使い慣れた技術で構築している
 プロジェクトが始まってから開発ツールの勉強をしているようでは不測の事態が発生するリスクをかかえることになります。
 例えばやろうとしていたことがそのツールではできなかったり、バグ等で正常動作しないなどのトラブルはよくあることです。プロジェクト失敗のリスクを減らすためにも使い慣れたツールを選択するか、ツールを検証する期間をプロジェクトに入れておくべきです。

5 コミュニケーション
 顧客と自社担当者、顧客内部、自社内部などのコミュニケーションの断絶がプロジェクトを危機に陥れることがよくあります。そのような状況を避けるためにも顧客側に自社の体制を決めてもらい問題があったら経営者が積極的にかかわるようにしてもらう必要があります。またこちらも議事録は残す、依頼事項は書面またはメールなどで記録が残るようにするなどこちら側で打てる対策は全て打っておく必要があります。

6 プロジェクトマネージメント
 プロジェクトの成否はプロジェクトマネージャーにかかっているといっても過言ではないでしょう。経験豊富なPMをつけてプロジェクトが危機的状態にならないようコントロールしなければいけません。またロジェクトマネージメントのフレームワークを作成してPMを育成する体制を作ることも必要でしょう。

 ソフトウェア開発は成功させることが難しく利益率もあまりいい仕事ではありません。正直にいって私は自分で行うビジネスとして受託ソフトウェア開発は選択しません。スキルの高い人材が必要な割にはリターンが少ないからです。

 ビジネスを選択する基準として投入する労力に対するリターンがどのくらいかということを推測することは必要ではないでしょうか?これは株式投資と同じで投入金額に対するリターンがどれくらいあるかによって銘柄を決定するのに似ていると思います。

 もちろんビジネスはお金が全てではなく、企業理念や社会貢献なども考慮して行うべきであると思います。しかし高邁な理想を語るためにも企業は利益をあげなければ存続できません。反社会的な行為で利益を上げるのは論外ですが、利益があがるビジネスを選択することは企業としては当然のことだと思います。