賢者の愚行
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ディビッドハルバースタムの「ベストアンドブライテスト」を読みました。アメリカがベトナム戦争を起こして負けるまでのアメリカ政府の内情を書いたものです。登場する人物に関する描写がとても面白かったですね。
第2次世界大戦では戦勝国だったアメリカがなぜベトナムで負けてしまったのかとても興味がありました。そしてこの本を読んでいて思ったのはアメリカがベトナムで行ったことは日本が満州で行ったことにとても似ていると思いました。
南ベトナム政府は腐敗していてちゃんとした国家の形態をしていなかったそうです。そんなだめ政府をアメリカがもり立ててなんとか国を維持しようとします。これは日本が満州国を立てたことに少し似ています。アメリカは日本が満州で行ったことよりはあからさまではないですが、傀儡政権を打ちたてようとしたのは同じだと思います。結局国民に指示されない政府を応援してもだめだということです。
戦争を始めたケネディ政権には当時とても優秀なスタッフが結集していました。国防長官のロバートマクナマラはとても有名ですよね。統計学を駆使して人間コンピューターと呼ばれた人でしたが、戦争に勝つことはできませんでした。
大統領補佐官のマクジョージバンディはホワイトハウス内では一番の切れ者と言われた人で、小さいころから神童と呼ばれていた人です。
国務長官のディーンラスクは奨学金で大学を卒業した苦労人ですが、彼も頭のよさではぴか一で大統領に非常に忠実な官僚でした。
彼らは確かにとても賢くて自信に満ち溢れていましたが、現実を直視せず傲慢になっていったことがベトナム戦争を悪化させた原因でした。政府を離れたあとも彼らは自分たちが悪いと反省することなく他の原因でそうなったといいわけをしています。これは国家を指導する立場の人としては失格なのではないでしょうか?
理由はなんであれ多くの人たちが戦争で死にました。アメリカは日本との戦争でも空爆や原子爆弾を落としました。日本の場合は日本側に問題があったからやむをえなかったかもしれませんが、ベトナム戦争は明らかにアメリカのほうが間違っていると思います。当時国を指導する立場のある人はやはり責任はあると思います。
日本でもそうですが、エリートの人たちは何でもわかっていると思い込んでいるので、自分の考えを押し付ける傾向にあります。このホワイトハウスのエリートたちも自分たちが正しいと思い込んでいたのでしょうが、ベトナムでの状況はわかっていなかったのでしょうね。
日本の軍国主義時代もエリートが支配する時代でしたが、エリートというのはどこか偏っているように感じます。今の日本も政治家を見ると一般社会とあまりにも離れている議論を聞くことが多くてまた変なことにならないかと心配になってしまいます。