【書評】 セイビングザサン

4532350921セイビング・ザ・サン―リップルウッドと新生銀行の誕生
ジリアン テット Gillian Tett 武井 楊一

日本経済新聞社 2004-04
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 新生銀行はATM使用料や送金手数料が無料の銀行というイメージしかない人が多いと思いますが、この銀行はかつて日本長期信用銀行と呼ばれた由緒ある銀行だったと知っている人はどれくらいいるでしょうか。

 この本は長銀がバブル崩壊で破綻して新生銀行に生まれ変わる経緯を詳しくレポートしています。長銀はバブル時代にいい加減な融資を行ったために不良債権が膨らみ国有化されたのちにリップルウッドという投資グループに売られます。
 このとき企業評価の結果あまりにも不良債権が多いためにリップルウッドはロスシェアリングという契約をしようとしていました。これは損害額がどれくらい出るかわからないから後でわかったときに売主と買主で半分づつ負担しましょうねという契約です。
 しかし当時の日本はM&Aはあまり行われていなかったためロスシェアリングを行うための法整備がなされていませんでした。そこで考え出されたのが瑕疵担保契約というものです。
 これはものを売買するときと同じで、売った後で欠陥品とわかったら売主が全て損害を負担するというものです。つまり政府が税金で全て損害をカバーするということです。ちゃんと法整備すればそんな契約しなくて済んだのに日本の政治家の無能さが露呈していますね。

 リップルウッドは当時はげたかファンドと言われていましたが、実際は破綻した企業を再生するという理念を掲げたすばらしい企業です。JPモルガンやゴールドマンサックスのような資本主義の落とし子のような企業ばかりかと思っていましたが、要は経営者の信念しだいなんでしょうね。

 いままで銀行は護送船団方式で互助会のような状態で経営されていました。いつも銀行を行って違和感を覚えていたのは役所と同じ雰囲気があることでした。結局銀行は自分の業界しか見ていなくて顧客をないがしろにしてきたということなのでしょうね。その中で新生銀行のように調和を乱すような銀行は営業しにくいのが日本の実情なのでしょう。

 しかし日本も間接金融から直接金融へ資金調達がシフトしていくにしたがって、銀行も顧客を大事にせざるをえなくなってきたのだと思います。
 産業構造も重厚長大産業のように多額の資本がないとビジネスができなかった時代からインターネットや情報産業のように元手が少なくてもはじめられるビジネス中心の時代に移りつつあります。
 そのような状況ではいよいよ資金需要も少なくなっていくでしょう。銀行は融資業務だけではなく企業財務やM&Aのコンサルティングなどより高度な業務をやっていかないと食べられなくなる時代になりつつあるのではないでしょうか。

 この本も面白くていっきに読んでしまいました。最近経済がマイブームになりつつあります。


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