リスク 神々への反逆

Tommyさんにお借りした「リスク」を読みました。
2冊の文庫本で読み応えがありました。

 この本では金融市場で今や当たり前になったリスクコントロールの考え方を数学の歴史をひもときながら解説しています。
リスクに関する考え方は元々はギャンブルでの確率から出発しました。
リスクに対する考え方の発展はまさに数学の発展とともにあったことがわかります。
フェルマーパスカルラプラスなどの物理学や数学で必ず出てくる科学者が確率の研究も行っていたんですね。
この辺りの話は「フェルマーの最終定理」の内容ともかぶっているところがあるのであわせて読むと面白いと思います。


 前半は数学の歴史といった感じでしたが、後半からはだんだんと金融工学的な話が増えてきます。
ケインズやフィッシャーブラックなど経済学やファイナンスの有名人が出てくるのを見ると数学というプリミティブな学問が資本主義市場に利用されていく過程がよく理解できました。


 リスクとは損害が発生する可能性で損害規模 X 発生する可能性で数値化できます。
そして時間がないとリスクも発生しないという考え方は面白いと思いました。
そのときのことだけ考えていれば確かにリスクはないですね。
また普通はリスクは誰にとっても嫌なものでできれば避けたいものです。
先物やオプション取引などはリスクを他の誰かに転嫁する仕組みですが、これらが発展するのもリスクを嫌うためなのでしょう。
しかし、リスクを取るからこそ社会が発展するという考え方は新鮮な感じがしました。
最初に飛行機を飛ばした人は墜落するリスクをおかしてやったでしょうし、世界で一番大きいビルを建てるのも前例がないからリスクは結構あったと思います。
これらの人は単に無謀な挑戦をしたのではなく、リスクを最小限に押さえながら新しいことに果敢に挑戦したのだと思います。


 この本では作者が金融関係の人なので金融を中心としたテーマがメインになっています。
しかし、どんなことをやるにもリスクはあると思います。
生きていることだっていつ病気や事故で死ぬかもしれないというリスクがありますし、会社が倒産して失業するというリスクもあります。
生きて行く上ではリスクとはつきあっていくしかないのでしょうね。
ただ、リスクを取ることと無謀な行為はちゃんと区別して考える必要はあります。
多額の予算がかかるビジネスやプロジェクトでもどのようなリスクがあるのか洗い出しもしないで実行してしまうことがあります。
もちろん全てを予測することは不可能ですが、考えうる限りのリスクは想定して手を打っておくという努力はしておくべきです。
しかし、会社組織でやっているとそういう思考にならないことが多いような気がします。
経営者はリスクに対してもっと理解すべきじゃないでしょうか。

この本を読んで改めて数学を勉強してみようかなと思いました。

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