会計デバイド

 私の知り合いの個人事業主や小規模な会社の社長さんは仕事ができる人たちばかりなのですが、経理や会計に全く関心がない人が多いです。
たいていは税理士や奥さんに任せっきりで帳簿をほとんど見ないという人も結構います。
経理というと間接業務で利益を生まないからやる気が起こらないのかもしれませんが、仮にも経営者であればお金の管理技術である会計を知らないというのは無免許で運転しているドライバーと同じなのではないでしょうか。
会計に興味のない人は利益の基本であるお金に興味がないからかもしれません。


 私も若い頃は会計や金融などは全く興味がありませんでした。
新しいプログラミング言語やOSに興味があってしょっちゅう秋葉原へ行く技術オタクでした。
しかし、ITの仕事を長年してきて待遇が悪くて使い捨てのようにエンジニアを使う企業を見ていて何かおかしいと感じ始めました。
またまじめに技術をやっている企業よりも人の上前をはねる人材派遣会社の方が大きくなっているというのも理解できませんでした。
そのころから企業はどういう仕組みで動いているのだろうということに興味が出てきました。
そして自然と会計や財務を勉強するようになりました。


最初に読んだのはたまたま近くの本屋さんで見たこの本でした。

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なぜダイエーは破綻寸前なのか、日産はどうやって復活したのかなど当時のニュースを題材にとても面白い内容でした。
私はこれで企業は決算書というので判断されるのだなということを知りました。


そして次に読んだのがこれです。

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森生 明

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企業の価値とは何なのか?
M&Aなどで企業を売り買いしているけど値段はどうやって決まるのか?
それは将来どれだけの利益を生むかによって決まるという考え方です。
自分が会社で働いているときはそんなことを考えた事もありませんでした。
ただ、命令される作業を行って給料をもらうだけと漠然と思っていただけでした。
しかし、企業は利益を生み出さなければいけません。
なぜならば株主に利益を還元しなければいけないからです。
それがわかったとき、なぜIT業界でエンジニアが使い捨てられるのかが理解できました。
企業は稼いで株主に還元しなければいけないので、表向きは従業員のことを考えているといいつつも本心では利益しか頭にないということです。


お金は企業の血液ともよばれますが、社長さんが一番頭が痛いのは資金繰りでしょう。
財務関係で初めて読んだのがこの本でしたが、とてもわかりやすくて企業の資金調達の考え方がよく理解できました。

MBA財務会計 第2版 (日経BP実戦MBA)MBA財務会計 第2版 (日経BP実戦MBA)
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 お金を調達するのにも銀行から借りる負債と株式を買ってもらう投資があります。
負債は金利を付けて返せば終わりですが、投資は配当を利益から出し続けなければいけません。
(配当なしというのももちろんありますが。)
なので資金調達コストは投資してもらったほうが高くなります、なんてことも経営者だったら知っておくべきことですよね。
だいたい会社の運転資金をサラ金から借りる経営者はもう会社を経営する資格なしといわれても仕方がないでしょうね。


 こんな感じで色々調べているうちに自分の頭がだんだん会計脳になっていきました。
企業の決算書を見るとだいたいその企業の状態がわかるようになりましたし、ビジネスのことを考える場合固定費や限界利益などを自然と考えるようになっていきました。
つまり、お金という切り口でビジネスを見れるようになったということです。
それまでは自分の好きな事や興味のある事しか考えられなかったのですが、別の視点から見れるようになったというのが会計を勉強してよかった一番のポイントだと思います。


 私は友人には会計は絶対勉強したほうがいいというのですが、興味のない人にはいくらいってもだめでした。
特に自分でビジネスをやっている人にとってははかりしれないメリットがあると思うのですが、なかなか理解してくれないですね。


 私たちは資本主義の世界で生きています。
麻雀やポーカーを上達するためにはルールを覚える必要があります。
それと同じで資本主義社会でうまくやっていくためには資本主義のルールである会計や財務を知らなければいけないと思います。


これからはデジタルデバイドより会計デバイドのほうが大きな問題になっていくかもしれませんね。