起業家だけ

起業家の本質起業家の本質
ウィルソン・ハーレル 西川 潔 板庇 明

英治出版 2006-07-26
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 私は起業家というキーワードにすぐ反応してしまうんですが、「起業家の本質」という本はそこそこ面白かったかなという感じです。
 この本は起業家とはこうあるべきという著者の考えを書いたものです。
著者は多くの会社を起業した経験がありインクという企業家向け雑誌を主催していました。
 これが書かれたのは1994年でITバブルが起こる直前くらいなのでアメリカがようやく不況から脱する時期ということもあり、希望にあふれている感じがしました。


この中で印象に残ったポイントとしてはこんな感じです。


1 起業家は常に恐怖と戦わなければいけない
 起業家はビジネスを行っているとき、冷や汗をかくことが多いと思います。
顧客から突然契約解除をされるとか主要なメンバーに裏切られるなどどの起業家も体験していることのようです。
しかし、こういう状況でも自分を見失わないで冷静に対処することが起業家には求められます。


2 起業する目的はお金ではなく自由である
 これを読んではたと私も気づきました。
私が求めていたのもお金ではなく自由だったんだと。
自分で考えたアイデアをビジネス化して多くの人に提供するという自由はサラリーマンではなかなかできないことです。
著者は起業家に会社の経営権は絶対他者に渡してはいけないと書いています。
経営権こそ自由を保障するものだからでしょうね。


3 ウォールストリートとの付き合いは通訳が必要
 銀行や投資家と付き合うことは起業家にとっては重要ですが、苦痛でもあります。
起業家は調達した資金やビジネスで上げた利益を新たな投資にまわそうとしますが、銀行や株主は利益を回収しようとします。
そもそも利害が一致しない者同士だからその間を取り持つ人が必要ということなのでしょう。
投資銀行のコンサルタントなどを役員に迎えて投資家対策をすることは起業家にとって重要なことなのでしょうね。


4 起業家は狩猟民族のDNAを持つ
 著者は起業家は農民のようなメンタリティではできないといいます。
ある意味常に不安定で恐怖にさらされる起業家は安定志向ではつとまらないのでしょうが、狩猟民族のDNAが必要というのはあまりにも非科学で同意できません。
 それよりも合理的な思考ができる人が起業家に向いているのではないでしょうか。
日本のように新しい産業がおこらない国はどう考えても凋落していくということは論理的に考えられる人だったらすぐわかることだと思います。
合理的思考こそリスクを軽減させる武器ですね。


5 日本は重要でなくなる
 この本が書かれた1994年当時は日本はバブルが崩壊して凋落していったころでしたが、当時は製造業は圧倒的な強さがありました。
その頃に日本の更なる凋落をアメリカ人が予測していたのは驚きです。
ただその頃私も日本で働いていて同じことを感じていました。
特に日本のIT業界はNTTと電機メーカーに牛耳られていてアメリカのような新興企業が出てこない状況でした。
そしていまだに次世代を担う新しい産業や企業が日本には出てきていません。
おそらくこのまま行くと日本はもっと落ち込むでしょう。
いつまでもトヨタやキャノンに頼っていくわけにはいかないと思うんですけどね。

 著者は戦争も体験していて少し古いタイプの起業家ですが、現代の起業家も心がけるべき点を指摘してくれています。
こういった先人の知恵に耳を傾けつつ新たな挑戦をしていきたいものですね。