ウィキノミクス - マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ

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ドン・タプスコット/アンソニー・D・ウィリアムズ 井口 耕二

日経BP社 2007-06-07
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私は今まで色んなビジネス書を読みましたが、いつも何かしっくりこないという感じでした。
しかし最近出たばかりの「ウィキノミクス」を読んだらなんとなくわかったような気がしました。
それは今までのビジネス書が会社単位での視点でしか書かれていなかったからです。


この本ではLinuxWikipediaなどを例にあげて組織の外部の人たちとコラボレーションをしていく活動を分析しています。
ITの世界ではオープンソース活動が有名ですが、金の採掘やオートバイの製造にも最近同じような動きが出ているようです。
著者はこういった状況を観察してこれからの時代は組織の中のリソースだけではやっていけなくなることを予言しています。


日本の大企業を考えると毎年優秀な大卒の人材を大量に雇用しているのですが、その大企業でさえいまや人材不足を訴えています。
ましてや中小企業となると状況はもっとひどいでしょう。
こういう状況になったのは情報化が進んで進歩のスピードが速くなっていることが原因だと思います。
つまり新しい状況に対応するための人材を企業内だけで調達は不可能なくらい様々な能力が求められる状況になったということです。
この動きの速い時代に企業がいかに対応するかを考えると外部とのコラボレーションというのは自然な流れなのかもしれません。
そのモデルがお金儲けに関係ないオープンソースから出てきたというのは面白いですね。


外との協力を企業の基本ポリシーとしている会社はIBMやボーイング、レゴ、BMWなど西欧の企業ばかりです。
日本の企業が全く出てこないはまずいのではないかと危機感を感じます。
これは日本が強い自動車や家電などの製造業では製品は企業が作るもので消費者はそれを使うだけという考え方が強いからなのかもしれません。
もちろん素人にエンジンやコンピューターのことはわからないでしょうが、日本企業はもっと一般の人を巻き込む仕掛けを作ってもいいんじゃないかなと思います。
例えば最近は使うのが簡単な3Dソフトがあるのでユーザーに好きな車のデザインをしてもらうとか、Linuxがインストールしてある携帯を出して色んな機能をソフトウェアで組み込めるようにするとか。
ボトルネックは企業の経営者の頭の固さなのでしょうね。
結局ウィキノミクスの核心は他人を信頼するということだと思います。
最近、企業は情報漏洩やSOX法対策などリスク回避ばかりに注目しています。
これって人を疑う事ばかりやってるってことですよね。
しかし、そんなことばかりやっていると時代の流れに取り残されてしまうのではないでしょうか。


私も色々体験したのでわかるのですが、外部とコラボレーションするのはそう簡単ではありません。
しかしそのスキルを身につけないとこれからやっていけなくなることもまちがいないようです。