ウェブ時代 5つの定理

ウェブ時代 5つの定理 この言葉が未来を切り開く!ウェブ時代 5つの定理 この言葉が未来を切り開く!
梅田望夫

文藝春秋 2008-02-28
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梅田さんの著作はほぼ全て読んでいますが、これは自分にとってその中で一番よかった本でした。
ここに書かれている内容ですでに知っている事が多かったのですが、それを整理して一貫した考え方にまとめてもらって改めて自分の考え方が強化されたような気がしました。


この本ではシリコンバレーで活躍する企業の特質を5つのポイントで説明しています。


アントレプレナーシップ
・チーム力
・技術者の眼
・グーグリネス
・大人の流儀


シリコンバレーの企業はただ利益をあげるのではなく、世界を変えるというミッションをもってビジネスをしているところがユニークです。
それは彼らが出す製品を見てもわかりますね。
そんな人たちって変人ばかりなのかなと思うんですが、意外なことにチームワークを大事にする人でないとやっていけないようです。
本の中で「好きな人と仕事をする」というのがあるのですが、一緒に仕事をしたいと思う人と仕事をすることが一番幸せであるというのは同感だと思います。


またシリコンバレーはエンジニアがリスペクトされるという点でも日本とはかなり違います。
自分の体験から見ても日本の企業は営業が強くてエンジニアはその付属品といった感じがします。
しかしシリコンバレーはエンジニアが主役であり利益を生み出す源であると考えられています。
まさにエンジニアのパラダイスですね。


シリコンバレーの企業の中でも今絶好調なのがグーグルです。
この企業のすばらしさはスタンフォード大学の文化をそのまま企業に持ち込んだことです。
世界をよりよくするために働こうというミッションや自分たちのやりたいように経営するための株主軽視とも言えるやり方など今までの企業にはない独自のやり方で経営しています。
グーグルこそシリコンバレーがそのまま企業になったような会社なのでしょうね。


これを読んで日本にはこんな環境は永久にできないだろうなと思いました。
国はベンチャー育成などの施策を行っていますが、世界でも最低レベルの起業率を見ると効果が出ていないのは明らかです。
また日本は製造業が強いためソフトウェアはその付属品としかみられません。
これだけハードのコモディティ化が進んでいるのにハード中心にしか考えられないというのは企業のDNAのせいなのかもしれません。


また日本人がいまだに大企業指向なのも問題です。
日本のベンチャーが育たない原因の一つが人材の問題です。
大学の理工系を出た人はまずITベンチャーにはこないでしょう。
やはりNTTや大手メーカーなど大企業に行く人がほとんどだと思います。
シリコンバレーでは大学で最も優秀な人は自分で起業するそうですが、日本で優秀とされている人が起業できるかというと難しいのかもしれませんね。


日本にもITベンチャーと呼ばれている会社はありますが、シリコンバレーの企業と決定的に違うのはプロダクト指向ではないということです。
シリコンバレーの有名なITベンチャーはみんな独自のプロダクトをもっています。
例えばGoogleは検索エンジン、AppleはMacやiPod,Oracleはデータベースなど。
それに比べて日本のベンチャーは差別化できるようなプロダクトがあるわけではなく、日本国内だけでやっているからやって行けているという状態です。
日本のITベンチャーの偉い人たちをみてもMBAや金融関係の人たちばかりで、エンジニアの人はあまりいないですよね。


おそらくシリコンバレーというのは特別な場所なのだと思います。
だから優秀な人が集まってくるのでしょうね。
この本は日本のIT産業に絶望しているエンジニアにとって希望を与えてくれるものだと思います。
遅ればせながら自分もいつかシリコンバレーで働けるようがんばっていきたいですね。