今のやり方ではIPv6は普及しない

インターネットの世界では今年中にIPアドレスが枯渇すると言われています。
IPアドレスとはインターネット上でコンピューターを特定するための番地のようなもので、IPv4と呼ばれている現在のバージョンのIPアドレスは全部で43億個ほどあります。)
IPアドレスの枯渇問題はかなり前から議論されていて、IPv6という新たなプロトコルを15年前に制定しましたが普及しませんでした。
なぜ普及しなかったかというと導入側にメリットが何もないからです。
確かにIPv6導入によってアドレス枯渇問題は解決するでしょうが、導入側にはそれ以外のメリットが何もありません。
なおかつNATやVirtualHostなどの技術によって少ないアドレスでもなんとかネットワークを運用することができました。
そんな状況で新たな基盤プロトコルの導入などするところはあまりないでしょう。


ある特定の組織が大量のIPアドレスを保有していて死蔵されているアドレスがたくさんあると主張する人もいます。
池田信夫ブログ IPアドレスは枯渇していない
彼はIPアドレスをオークションで取引できるようにして効率よく使うことを提案しています。
もし、これをやればまだしばらくは枯渇しないかもしれません。


問題はIPv6を導入するインセンティブが導入側に感じられないことです。
ネットワークのIPアドレスを変更するのは大変な作業です。
最近のIT機器はデュアルスタックでIPv4/IPv6両方に対応していますが、様々な機器やソフトウェアが動いているネットワークで全てのサービスが正常に動作するかチェックするだけでも大変です。
なのでその作業を行ってもあまりあるメリットがないとなかなか普及はしないでしょう。
そんな大変な作業をするくらいなら高いお金を払ってでもIPv4アドレスを買うほうがいいと思う人も多いかもしれません。


20年くらい前、OSIプロトコルというのがTCP/IPに取って代わると言われましたが結局OSIプロトコルは消えてしまいました。
なぜならOSIプロトコルはあまりにも複雑で当時のエンジニアは扱いたくないと思った人が多かったからです。
結局はこれもインセンティブの問題でメリットがなければ誰も新しい技術を導入などしないのです。
IPv6OSIプロトコルの教訓から全然学んでいないようですね。


IPv6を普及させたければIPv6でしかできない魅力的な機能やサービスを提供すべきだと思います。
日本のインターネット黎明期は大学間でしか接続できませんでしたが、高額な回線やルーターが必要でもインターネットにつなぎたいと思う人たちがたくさんいました。
それと同じ状況を作り出さないとIPv6は普及しないでしょう。
やはりIPアドレス枯渇という後ろ向きな理由だけでは人はなかなか動かないのではないでしょうか。


技術系の人は新しい技術が全ての問題を解決してくれると思いがちですが、考え方を変えれば既存の技術でも十分解決できることがあります。
IP枯渇問題はIPv6導入の前にオークションや大量アドレスの解放などやれることが結構あるのではないでしょうか。
ただ、IPv4も有限なアドレスなので延命できたとしてもいつかは枯渇するでしょう。
なので並行してIPv6を使った新しいネットワークサービスの提案などもやるといいと思います。
それはモバイル通信や宇宙での惑星間通信など新しい分野での活用かもしれません。


IPv6が制定されて15年たってもこんな状況なのだからちょっと方法を変えてやっていかないとだめなんじゃないでしょうか。