ニーチェ入門

ニーチェ入門 (ちくま新書)ニーチェ入門 (ちくま新書)
竹田 青嗣

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ニーチェというと非常に難解な哲学というイメージだったので気にはなっていたのですが、なんとなくスルーしていました。
しかし、最近なぜか気になってまずは入門書を読んでみました。
まだ全然理解できていないのですが、自分にとって印象に残ったポイントを書いてみました。

  • キリスト教批判

日本人には想像できませんが、欧米の人たちはキリスト教が考え方の基本となっています。
キリスト教では隣人愛という利他的な考え方を強制しますが、ニーチェはそれはルサンチマンから出てきた考え方だといいます。
ルサンチマンとは強者に対する怒りや憎悪であり、そこから妬みや羨望といったマイナスの感情が発生します。
もともと人は自己を一番優先するという本能を持ちますが、キリスト教は自分のことより他人のことを優先して考えるように強制してきます。
しかし、それは不自然なことで結局は自己否定につながる考え方です。


これは今の日本人も同じ状況ではないでしょうか。
日本はキリスト教国ではありませんが、総中流時代が長かったせいかスーパーリッチな人や恵まれた人を妬む文化が根づいているように思われます。
フェラーリに乗っているIT長者が妬まれるのは有名な話ですよね。

  • ニヒリズム

キリスト教は最近までは西欧の多くの人達にとって心のよりどころでした。
しかし、科学が発達することによって多くの人が宗教を信じなくなっていきます。
ニーチェはそれをみんながよってたかって神を殺したといいます。
その結果、人々は人生や世界に目的などないという虚無感をもつようになります。
この虚無感がニヒリズムです。


最近の日本も心に虚しさを感じている人は多い感じがします。
それは、戦後の焼け跡から追いつき追いこせと頑張ってきた結果、
世界第2位の経済大国になって生きる目的を見失ってしまったからかもしれません。

  • 力への意志

人という生物は自分の力を伸ばし広げることを指向しています。
より強くなりたい、より優秀になりたいというのは人間の根源的な欲求です。
これはキリスト教的な他者を愛して自分を愛するのではなく、自分を愛することを通して他者を愛するという考え方につながっていきます。

これがニヒリズムを克服するものとしてのニーチェ哲学のキモなのですが、あまりよく理解できませんでした。
永遠回帰とは自分の行いが未来永劫反復されるという意味のようですが、そんなのは罰ゲームのようにつらいことではないかと思います。
ただ、ふと自分の人生を考えてみると今までやめないで続けてきたことは自分を向上させてきたなと思います。
つまり、繰り返し行われることはその人にとっていいことのみが繰り返されるのではないかということです。
そうでないと続かないですからね。
だからキリスト教など宗教で戒律などでこうしなさいと強制されるのではなく永遠に繰り返してもいいと思う行いが自然と人としていい行いになるということなのかなと思いました。
全然はずしているかもしれませんが。


そして、超人という考え方は宗教に変わる生きる目的を創りだそうという試みです。
ルサンチマンによる没個性化がニヒリズムを引き起こすと考えたニーチェはその解決策として強くて優秀な人をみんなのロールモデルにしようとしたのだと思います。
つまり、非常に優秀な超人がいて他の人達は超人をめざして自己研鑚にはげむという社会を理想としたのではないでしょうか。
この辺は難解なのでいまいち自信がないですが。


20世紀になって多くの先進国は民主主義国となって少なくとも法律的には平等になりました。
その中で日本はひどく貧しい人も少なくなり世界で最も均質化が進んだ国になりました。
その結果、ルサンチマン的な社会になりニヒリズムが蔓延する社会になったのではないでしょうか。
ニーチェ入門を読んで、今の日本の停滞を突破するヒントがここにあるのではないかという感じがしました。
つまり、ニーチェは人とはこういうものでよりよい社会にするためにはどうしたらいいかを考えた人なのだと思います。
そう考えると今の日本に一番理解されるべき哲学者なのかもしれませんね。