[ビジネス] リーンスタートアップ




リーンスタートアップというのをご存知でしょうか?
スティーブン・ブランクのアントレプレナーの教科書という本がありますが、彼に影響を受けたウェブサービス起業家のエリック・リーズが考え出したビジネス手法です。
彼は一度シリコンバレーで起業して失敗しているのですが、それを教訓にどうすれば成功する確率が上がるのかを考えました。
その答えは簡単に言うと顧客が誰なのかを見つけ、どういう問題を抱えているかを理解することです。
そして、その顧客に問題の解決策を提供すれば自然とビジネスになります。
彼の手法はウェブサービスを前提にしていますが、他の業種にも応用可能な手法です。


上のビデオは彼がスタンフォード大学で講義したときのものですが自分なりに重要と思われるポイントをまとめて補足してみました。


1 すばやくたちあげる。


まず、いけそうなサービスを思いついたら必要最小限の機能のみを実装してできるだけ早く公開します。
最初、ソフトウェアはバグだらけでもスピード重視でリリースし、課金もします。
そんなことをしたらクレーム殺到でビジネスがだめになると思いがちですが、エリックは存在すら知られていないサービスにとっては気にすることではないといいます。
しかし、課金されているユーザーは文句を言ってきますので、頻繁にバグフィックスもしくは機能追加を行っていきます。
彼が運営するIMVUという3Dチャットサービスでは1日に20回もシステムを更新したそうです。
ただ頻繁に更新するためには開発手法をアジャイル方式にする必要があります。
アジャイル方式とは仕様変更を前提としたものでウォーターフォールモデルの硬直性を解決するために考え出された開発手法です。
アジャイルの詳細については「アートオブアジャイルデベロップメント」を参照してください。

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また、「アジャイルな見積りと計画作り」というアジャイル開発についての本の書評も書いてますのでよかったら読んでください。

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そうはいってもいきあたりばったりでシステムを作ったらいつか破綻してしまうでしょう。
したがってシステム自体が頻繁な変更に耐えうる構造に設計されている必要があります。
その構造とはシステムがいくつかの適度な大きさのモジュールで構成されていて、お互いが疎結合されているアーキテクチャーになります。
なぜモジュールが疎結合である必要があるかというと、モジュールが密結合されていると一部の修正の影響が全体に波及してしまうからです。
具体的にはモジュール同士がメッセージをやりとりすることによって連携される構造がベストでしょうね。


さらに、頻繁な変更後、正常に動作するかのテストが行えるようにテスト駆動開発も行う必要があります。
テスト駆動開発とはまずはテストコードを書いてから実装コードを開発するという手法です。
テストコードさえ事前に書いておけば実装コードを変更してもすぐに不具合を検知することができます。
テストはユニットテストとインテグレーションテストの2種類のテストがあります。
ユニットテストとはクラスのメソッドごとに行うミクロなテストで、インテグレーションテストはある一連の操作を単位とする処理がうまく動作するかをテストするものになります。
ちなみに私はRubyで開発するときはRspecでテストコードを書いています。


2 走りながら探して変えていく


エリックが話すようにウェブサービスビジネスは誰が顧客か明確にはわからない状態でスタートしなければいけないことが多いものです。
または、分かっているつもりでもビジネスをやっている中で本当の顧客は想定していた顧客と違っている場合もあります。
そんな例として写真共有サイトFrickrの話が出されていました。
Frickrは最初はネットゲームサイトとしてスタートしましたが、サービスをやっている中で写真共有にニーズがあることに気づいてゲーム開発をやめて写真共有サイトとして再出発します。
このように最初想定していた顧客とリアルな顧客が違っていたら柔軟に変更していくことがビジネスを成功させるための必要条件となります。


3 資金調達


今やインターネットは多くの人々に使われるようになり、ネットを介して様々なサービスを提供できるようになりました。
また、クラウドサービスやオープンソースを利用することによってサービス立ち上げの初期投資をかなり少なくすることができるようになりました。
さらにサービスをソーシャル化することによって広告やPRにお金をかけなくてもプロモーションができるようになりました。
そのおかげで銀行から巨額の融資を受けたりVCからの資金調達を受けて株式公開をめざさなくてもビジネスを立ち上げることが可能になりました。
いままではベンチャー企業の社長の仕事の8割は資金調達と言われていましたが、リーンスタートアップの考え方でやればウェブサービスの立ち上げに全てのエネルギーを注ぐことができるようになります。


日本からGoogleYouTubeがなぜ生まれないかというと日本社会では失敗が許されないからです。
企業では失敗すれば出世することができなくなりますし、銀行も一度失敗した企業家にはお金を貸したがりません。
しかし、失敗なくしては新しいビジネスは生まれないでしょう。
リーンスタートアップによって日本でも気軽にビジネスを立ちあげられるようになって新しいビジネスがどんどん出てくるようになればいいですよね。