近未来ハイパーノマドエンジニア物語

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(Photo of Melbourne City)


5年前くらいに、新しいワークスタイルや企業のあり方を寓話的にブログで書きました。
そのエントリーは以下です。


近未来ITエンジニア物語 - digital session log
近未来高校生物語 - digital session log
近未来CEO物語 - digital session log


これらを書いたときはそんな時代が来るのかもわからない状況でしたが、現実は人の想像を超えつつあります。
そんな今の状況にインスパイアされたので、新たなエンジニアの働き方の未来の物語を書いてみたいと思います。


(物語スタート)
私は生まれも育ちも日本ですが、今はオーストラリアのメルボルンに住んでいます。
仕事はアメリカのシリコンバレーにあるIT企業で働きつつ、自営のウェブサイトの運用で収入を得ています。
職種としてはサーバーエンジニアなんでしょうが、プログラミングもやりますし自分のサイトは起業家として運営しているので特定の職種を名乗るのも意味がなくなりつつあるのかもしれません。
こういう働き方ができるのも、自宅で仕事ができる時代になったからです。
インターネットによって世界中がつながるようになって、PC一つあればどこででも仕事ができる時代になりました。
それと、少し前までは一つの会社でフルタイムで働くのが当たり前だったでしょうが、2020年の現代では複数の仕事を持っているのが普通の時代になっています。


あ、メルボルンに住んでいる理由ですが、会社がそこにあるからではなくて、単にメルボルンの町が好きで移住してきました。
いま、オーストラリア政府は私のようなハイパーノマドエンジニアの移住を歓迎していて、通常は就労ビザや永住権がないとだめなのですが、技術を持っている高機能移民と呼ばれる人たちを多く自国に招き入れる政策を行なっています。
私は学歴もお金もありませんが、どこでも稼げるスキルを持っていることがビザのおりた理由でした。
ただ、ビザがおりるからといって日本人の誰しもが私のように移住するわけではなくて、やはり言語の壁が大きいです。
私は学生の頃アメリカに留学した経験があって、生活するのに言葉に不自由することがなかったので移住できました。
しかし、私の同僚のエンジニアは英語ができないので移住には踏み切れないようです。
日本語しかできないと、住む場所があの狭い日本列島に限られてしまいますね。


私の仕事は今の所、大きく会社の仕事と自営の仕事の2種類に分けられます。
会社の仕事は、クラウドサービスの構築運用と管理アプリケーションの開発です。
会社の他のメンバーはアメリカとアジアとヨーロッパに分散していて、やりとりは主にSkypeでやってますが、最近は社内SNSも活用しています。
私もそうですが、他のメンバーも仕事はほとんど自宅で行なっていて、家のPCから会社のクラウドシステムにログインして仕事を行なっています。
先日も新しい顧客向けに大規模なサーバーファームの構築を行いました。
今は便利な構成管理ソフトがあるので数百台単位の設定も一人で行うことができます。
なので、会社のオフィスにはほとんど行ったことがないのですが、みんな家で仕事しているのでオフィスにはほとんど人はいないみたいです。
東京オフィスは会社に入った頃に通っていましたが、シェアオフィスみたいなところを使っていましたね。


また、自営でやっている仕事は限定グループ向けのSNSサイトです。
一応、最初は自分一人で開発したのですが、今は自分の知り合いのエンジニアに運用や構築を手伝ってもらってます。
この仕事もどこにいてもできるので、東京やサンフランシスコの知り合いのエンジニアと一緒にやっています。
今のところ、そんなに収入にはなっていないのですが、自分の考えたサービスを人が使ってくれるのがうれしくて続けています。
エンジニアとして技術の腕を磨く場にもなっているので、今後も続けていきたいなと思ってます。
あと、Githubという自分の作ったソフトウェアを公開するサイトで、自作の開発ツールを公開しています。
そこで公開されている全てのソフトウェアはオープンソースなのでお金儲けにはなりませんが、自分の技術を磨くのといろんな人が私の作ったプログラムを使ってくれて改善してくれるのが楽しいですね。


よく、海外に住んでいて寂しくないですかと聞かれますが、全然そんなことはありません。
日本の友だちとはSkypeでよく話していて、日本のことを色々教えてくれるからです。
オーストラリアは日本とほとんど時差がないのでSkypeで会話するのにもいいですね。
それと今はLCCという格安航空会社のおかげで東京-メルボルン間が3万円くらいで来れるようになったので、結構頻繁に友達が訪ねてきます。
(ただ、時間が10時間くらいかかりますが。)
メルボルンは町がきれいで住みやすいし、少し車で行くと大自然があるので彼らもいつかここに住んでみたいと言ってましたね。



また、オーストラリアは移民の国なのですが、アメリカほど人種差別もないしオーストラリア人でも結構日本語を話す人がいます。
日本人も結構住んでいて、時々日本人の集まりに参加することもあります。
最近、オーストラリア人の彼女ができたのでシドニーやケアンズにいっしょに旅行に行きました。
彼女は日本が好きで、結構日本語が話せるのですが、私の英語の先生としてできるだけ英語で話すようにお願いしています。
あと、地元のメルボルン大学の教養学部で一般向けのクラスがあるので、そこに参加してラテン語の勉強をしています。
西洋の古典の多くがラテン語で書かれているので、それを原文で読んでみたいなと思ったからです。


今の所、メルボルンは気に入っているのでしばらく住む予定ですが、また新しくやりたいことが出てきたら移住するかもしれません。
次はイギリスのロンドンかブラジルのサンパウロあたりに住んでみたいですね。
(物語エンド)


日本にいるといいところや悪いところって意外にわからないものなのですが、海外に住むと外から日本を見ることができて改めて自分の国を理解できると思います。
他の国へ移住するというのは、社会保障とか病気になったときなど色々問題はありますが、一度しか無い人生なのでいろんな国に住んでみるという経験ができればいいですよね。

Geekなら読んでおきたい本

Wiredの「ハッカーズ(Hackers)投票結果発表! WIRED大学 新・教養学部必読書 10[ギークカルチャー]」
という記事でGeekが読むべき本がリストアップされていたのですが、その内容にちょっと納得がいかなかったので(笑)独断と偏見でおすすめ本をリストアップしてみました。
サブカル系とか興味ないので、ちょっと硬めのセレクションです。
ただし、何冊かはWiredとだぶっています。

  • ハッカーズ

ハッカーズハッカーズ
スティーブン・レビー 松田 信子 古橋 芳恵

工学社 1987-02
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ハッカーといえば、これははずせないでしょう。
ハッカーとは元々は技術的に人をあっと驚かせるようなことができる人をそう呼んでましたが、いつの間にかネットで悪さをする人の呼び名になってしまいました。
この本ではその古き良き時代のハッカーの話が紹介されています。
MITの鉄道模型クラブの話からはじまるところなんてかなりしぶいですね。

  • カッコーはコンピューターに卵を生む

カッコウはコンピュータに卵を産む〈上〉カッコウはコンピュータに卵を産む〈上〉
クリフォード・ストール Clifford Stoll

草思社 1991-09
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カッコウはコンピュータに卵を産む〈下〉カッコウはコンピュータに卵を産む〈下〉
クリフォード・ストール Clifford Stoll

草思社 1991-09
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これは私がプログラマーになりたての頃に会社の先輩に勧められて読んだ本です。
当時はまだインターネットなんて誰にも知られていない頃だったのですが、そのころにネットに侵入する話はとても新しい感じがしました。
出てくる技術も古くてKermitやテレタイプなど若い人は見たことも聞いたこともないかもしれませんが、そういう部分がわからなくても楽しめる内容だと思います。

  • 欺術(Art of deception)

欺術(ぎじゅつ)―史上最強のハッカーが明かす禁断の技法欺術(ぎじゅつ)―史上最強のハッカーが明かす禁断の技法
ケビン・ミトニック ウィリアム・サイモン 岩谷 宏

ソフトバンククリエイティブ 2003-06-21
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ハッキングといえば高度な技術を使って、侵入したり改ざんしたりというイメージがあると思いますが、セキュリティで一番弱い脆弱ポイントは人間です。
この本を読むと、人間ってこんなに簡単にだまされるんだというのを教えてくれます。
これを読んだ当時、私はセキュリティ関連の会社に転職しようかと考えていましたが、この本を読んでこれって警察の仕事だよねーと思ってやめました。(笑)

  • アンドロイドは電気羊の夢を見るか

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))
フィリップ・K・ディック カバーデザイン:土井宏明(ポジトロン)

早川書房 1977-03-01
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GeekはSF大好きです。
技術オタクなので技術でいろんな空想を広げてくれるSFに惹かれるんでしょうね。
この本はSFの中でも結構定番で、アンドロイドと主人公との戦いを中心にいろんな人間模様もあって哲学的にも色々考えさせられます。
映画「ブレードランナー」の内容とはちょっと違うところも楽しめるところだと思います。

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)
ウィリアム・ギブスン

早川書房 1986-07
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コンピューターをやっていると、やはりこのSFが出てくると思います。
私は正直あまり理解できなかったのですが、電脳空間とかジャックインなどマトリックスや攻殻機動隊の世界を先取りしていました。
将来は脳に直結してネットアクセスできる時代になるかもしれませんね。

  • マイクロコンピューターの誕生 わが青春の4004

マイクロコンピュータの誕生―わが青春の4004マイクロコンピュータの誕生―わが青春の4004
嶋 正利

岩波書店 1987-08-28
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かなり前の本ですが、技術的な内容もすばらしく開発現場の緊迫さがドラマみたいでとてもおもしろい本です。
(図書館で探せば見つかるかもしれません。)
後、似たような内容がウェブでも出ています。
世界初のCPU「4004」開発回顧録
4004というのはIntelが出した世界初のマイクロプロセッサで著者を含めた数人で開発されました。
日本人は独創性がないとよく言われますが、4004の事例は日本人も創造性があってイノベーティブな仕事ができる証拠だと思います。
アメリカの会社での働き方が日本とは大きく違っている話も結構あって、著者の嶋さんのインテルでの給料は3ヶ月ごとにあがっていったそうです。
日本の企業がだめなのは、悪平等で能力があって努力している人にちゃんと報酬を払わないからでしょうね。
そういう社会主義的なことをやってると最後はソ連みたいに崩壊しちゃうと思うんですけどね。

  • 暗号化

暗号化 プライバシーを救った反乱者たち暗号化 プライバシーを救った反乱者たち
スティーブン・レビー 斉藤 隆央

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いまやネットで暗号化は当たり前ですが、ちょっと前までは軍事機密で一般の人が使える技術ではありませんでした。
特に公開鍵暗号方式というのが開発されて、ネットでも安心して決済できるようになりました。
暗号技術に関わった科学者やエンジニアの人間ドラマもありでとても面白い本です。

  • Appleを作った怪物(iWoz)


アップルを創った怪物―もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝
アップルを創った怪物―もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝
スティーブ・ウォズニアック 井口 耕二

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私が最初に買ったPCはApple II J-Plusでした。
中古で買ったんですが、シンプルな構造なのに結構いろんなことができて、とてもおもしろい機械でした。
そのApple IIを一人で開発したのがスティーブウォズニァックでした。
彼は典型的な技術オタクで、お金には全く興味がありませんでした。
そして、彼はApple IIを開発したあと、Basicやディスクドライブまで開発してしまいます。
彼のような人を天才というのでしょうね。
ジョブズもウォズニァックがいなければAppleをはじめることはできなかったでしょう。
エンジニアとしては最も尊敬されるべき人でしょうね。

  • 未来を作った人々 - ゼロックス・パロアルト研究所とコンピュータエイジの黎明

未来をつくった人々―ゼロックス・パロアルト研究所とコンピュータエイジの黎明未来をつくった人々―ゼロックス・パロアルト研究所とコンピュータエイジの黎明
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グラフィックユーザーインターフェース、イーサネット、デスクトップパブリッシングなどいまでは当たり前のIT技術の多くは1970年代にゼロックスパロアルト研究所で開発されました。
こんな素晴らしい技術がたくさん出てきたのに、親会社のゼロックスはその価値をぜんぜん理解できませんでした。
その後、その成果はAppleやMicrosoftなどの新興企業に持っていかれてしまいます。
新しいことを理解するというのは、理屈よりも芸術的な感性が必要なんでしょうね。

伽藍とバザール伽藍とバザール
E.S.Raymond 鹿野恵子

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オープンソースというものが一般に知られる以前は、ソフトウェアといえば企業が作るものだと思われていました。
特にOSやデータベースなど規模の大きいソフトウェアは大企業でしか作ることができないと誰もが信じていました。
しかし、Linuxが登場してその思い込みが間違いだということに気づくことになります。
この本ではオープンソースの開発形態がなぜ機能するのかが論理的に分析されています。
そして、結論としてバザールのように無秩序でも多くの人々にチェックされることによってちゃんと動くものができるということでした。
そういうことが可能になったのもインターネットの普及のおかげだったんでしょうね。
そんな感じでソフトウェアを開発するとはどういうことかを考える上でとても参考になる本だと思います。

Geekな人って体制に迎合しないヒッピー的なスピリッツを持っている人が多いように感じます。
なので、これらの本でもそういう一匹狼的な人たちが多く登場します。
そういうスピリッツがあるからこそ新しいことにチャレンジする人が多いんでしょうね。
このあたりの本を読んでおけば、Geek同士での話のネタになるんじゃないでしょうか。

変わっていくこと

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photo credit: h.koppdelaney via photo pin cc


最近、世の中を見ているといろんなことが少しづつ変わっていってるなと感じるようになりました。
物事の変化というのは少しづつなのでわかりにくいですが、よく見ると結構変わってきたなということがいくつかあったので上げてみました。



1 PC → スマホ・タブレット
一番わかりやすいのははスマートフォン、タブレットなどの新しいタイプの端末でしょう。
スマートフォンやタブレット端末の出荷台数は去年1000万台以上出荷され、今年は3000万台くらい出荷されると予測されています。


国内スマートフォン、メディアタブレット市場予測を発表


これにより今までPCを使っていたユーザーがスマホ、タブレットに移行して使われ方も変わりつつあります。
デスクトップPCは企業のオフィスなどで働くワークスタイルを前提とした製品でした。
(技術的に持ち運べるほど小さくできなかったというのもありますが。)
それに対して、スマホ、タブレットは持ち歩いて使うことを前提とした製品です。
こういう端末の普及により、これからは人々移動しながら活動することが当たり前の時代になっていくでしょう。
これはかつてのウォークマンが外で音楽を聞くというライフスタイルを作り出したのと同じ構造のように考えられます。



2 製造業モデル → ノマドモデル
移動して働くスタイルを最近ではノマドを呼ばれるようになりました。
これはオフィスに通って仕事をするワークスタイルに対して、特定の場所に縛られない働き方をノマドと呼んでいます。
この変化は単なるオフィスのありなしではなく、根本的な働き方の変化を起こしているのではないかと思います。
今までは決められたことをいかに効率的に行うかという製造業的なモデルで会社は運営されていました。
しかし、経済のグローバル化のために製品が陳腐化する速度が速くなり、かつての延長でビジネスを行うことが難しくなりつつあります。
ノマドスタイルはそんな時代の変化に影響を受けて出てきた働き方ではないでしょうか。
最近ではコワーキングスペースもたくさんできて、オフィスを持たない人にとっては働きやすくなりつつあります。
まだ、この働き方が定着するかわかりませんが、新しいことには積極的にチャレンジしたいものですね。



3 正社員 → フリーランス
バブル崩壊後、日本の正規雇用者数は着実に減っています。


正規雇用者数と非正規雇用者数の推移



グローバル経済化した現代では社会の変化がかつてよりも速くなったため、企業の平均寿命が10年以下になってきています。
そのため、終身雇用というシステムを維持するのが難しくなってきて非正規雇用の割合が増えてきているものと思われます。
おそらくこの傾向は逆戻りすることはなく、企業はよりいっそう雇用の非正規化を進めていくでしょう。
これが行き着くところは大多数の人たちがフリーランス的な働き方をするようになるような状況です。


確かにフリーランスは収入が不安定だというマイナス面があります。
ただ逆に考えると、この変化の時代には適した働き方ではないでしょうか。
会社に勤めていると、自分のキャリアにプラスにならないことも業務命令であればやらなければいけません。
しかし、フリーランスでは自分の専門性やキャリア構築にあった仕事を選択することができます。
現実にはお金的な理由でしたくない仕事をやらなければいけない場面もあるでしょうが、大きな方向としては自分の好きな方向に持っていくことができるのではないでしょうか。


後、フリーランスのストックビジネス化も進んでいくでしょう。
フリーだと常に自分が動いていないと収入がなくなってしまうことが多いと思いますが、これからは自分が寝ていても収入が見込める資産づくりが重要になります。
例えば、課金制のウェブサイトの構築やライセンスや使用料のとれる知的財産などが考えられます。
そういう資産を持つことによって、フリーランスの不安定な部分をカバーすることができれば、フリーランスを目指す人が増えてくるのではないでしょうか。



4 資本主義 → 知価主義
20世紀は資本主義の時代でした。
製造業では大きな借金をして工場を建て、多くの機械を入れて、多くの人を雇って製品を作っていました。
また、サービス業も立地条件のいい物件にお店を出して、多くの在庫をストックして販売したり、高層ビルやタワーマンションなどを建てて不動産を販売していました。
これらは全て資本を基本としたビジネスでした。
なのでそんなに最先端の技術やアイデアがなくてもファイナンス的に大きなお金を動かせる人がお金持ちになれるという時代でした。
しかし、インフラが充実し、モノであふれる日本ではこのようなビジネスがうまくいかなくなってきました。
したがって、なくなりはしないでしょうが、大きなお金を動かして儲けるというモデルは難しくなっていくものと思われます。


それに変わるのが知識や特殊技能をもつ人材によるビジネスです。
その証拠にIT業界ではスマホやウェブのエンジニアが引く手あまたです。
また、アメリカでもGoogleFacebookでは優秀な人材をリクルートするのにしのぎを削っています。
そして、これからは医療やエネルギー、宇宙などの産業で優秀な人材の需要が増していくでしょう。
これは、資本よりもインテリジェンス的な資産のほうが価値が高くなる時代であり、これからはいくらお金がたくさんあっても優秀な人材を集められない企業は衰退するでしょう。
そういう時代を見越して、そういった人材を育てる教育システムの構築が急務となっていくと思われます。



5 依存 → 自立 (組織 → 個人)
今、日本の大半の社会人は企業に雇われて働いています。
しかし、その中で企業がどのように運営されているか理解している人はどれくらいいるでしょうか。
企業では分業が進んでいるため、会社全体のことを大まかでも知っている人は経営陣などごく限られた人だけでしょう。
例えば、企業はどのように資金調達しているのか、どのように集客しているのか、法律的な係争はどのようなものがあるのかはかかわった人たちだけしか理解していないかもしれません。
サラリーマンであれば税金は源泉徴収なので税金の申告をちゃんとしたことがない人も多いと思います。
また、顧客にしてもやってもらって当たり前、全て業者におんぶにだっこなことが増えてきたためお金さえだせば何でもやってもらえると思うようになってしまいました。
そのため人間としての生きる力が弱くなって、より他者依存な人が増えてきているように感じます。
しかし、これからの時代は個人にパワーがシフトしていく時代ですので、それぞれの人たちが自立していくことが求められる時代になっていくでしょう。
そのためにも会社や国に依存する割合を少なくして、できることは自分で考えて行うことが求められるようになると思います。



6 傍観者 → 当事者
私がいままでいろんな国を見て思ったのは、日本は当事者意識のない人たちが多いということでした。
例えば、アメリカに行ったときに一番に思ったのが障害者に対する対応でした。
アメリカでは駐車場の一番いい場所は必ず障害者用スペースですし、公共施設は体の不自由な人向けのスロープやトイレがどこでもありました。
それに比べ日本はそういう対策がかなり遅れています。
これは自分がいつか障害者になるという当事者意識がないことの表れでしょう。


また、海外ではどこの国でも国を守るのは自分たちだという意識をもっています。
しかし、日本はアメリカに国を守ってもらって再軍備のことを言うと右翼だとか軍国主義だというレッテルを貼ります。
もし、日本が有事になったときにどうするかという当事者意識がないから、そういうことを言うのでしょう。
もちろん、再軍備は憲法改正が必要だったり、過去の反省を忘れてはいけないことも大事なので慎重に議論すべきことです。
しかし、最初から拒絶反応のような態度は無責任な態度に見られてもしかたがないでしょう。


今までは平和な時代が続き、経済成長もしたので傍観者的な態度でもやっていけたのでしょう。
しかし、これからの時代は経済もおちこみ、東アジアの状況も混沌としてきている中で一人ひとりが当事者になり得るという前提で考える時代になりつつあるのではないでしょうか。


このように現代の日本はいろんな面で同時並行的に変わりつつあるように感じます。
こういう変化のときは今までの考え方が通用しなくなり、試行錯誤をしながら新しいやり方を模索する時代だと思います。
そのときに大事なのは個人が当事者意識を持って自分のこととして考えることなのではないでしょうか。



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オフィスがなくなる日

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photo credit: hermitsmoores via photo pin cc


ITの仕事をしていると、技術革新が激しいので新しいことを常に体験することができます。
そんな中でITによって人々の働き方も変わっていくのではないかと最近感じるようになりました。
では、働き方はどのように変わっていくのでしょうか。
思いついたことを書いてみました。
キーワードは創造性です。


1 オフィスはクラウドの中へ
 いままでは企業は自分のオフィスにサーバールームを作ってそこにサーバーを構築して使っていました。しかし、安価なクラウドサービスやVPSサービスによって自前でサーバーを持たなくてもよくなってきました。
現在は重要なデータを扱うサーバーなどはまだ自前で持つことが多いですが、セキュリティ部分がクリアされればそれもクラウド環境に移っていくものと思われます。
その結果、例えばホワイトカラー的な仕事はITによる自動化やコラボレーションシステムなどによってかなりの部分をクラウド上へ移せるのではないでしょうか。
そうなれば、働く人はどこからでもクラウド上のシステムにアクセスして仕事ができるようになるでしょう。



2 通勤はなくなる
 クラウド上のシステムでオフィス機能をはたせるようになったら通勤する必要がなくなります。
そうはいっても実際に顔をあわせて話さないと仕事にならないと思われるかもしれませんが、それもビデオ会議などの技術によって解決されつつあります。
一番の問題は企業文化でしょう。特に日本では家族的経営の文化があるので、やはり同じ屋根の下で仕事をするべきだと思う会社も多いでしょう。
しかし、企業は利益を求める組織です。
社員を通勤させることによってどれだけ損失を生み出しているかがわかれば、自然と変わっていくのではないでしょうか。
例えば、通勤がなければどこにでも住めるので都市などの土地の値段が高いところで家を買ったり借りたりする必要もなくなります。
そうすれば高い給料を取らなくてもやっていけるようになるでしょう。
また、通勤に毎日1時間も2時間もかけて通うのは時間と労力の無駄です。
これを仕事や趣味に費やすことができればどれだけ生産的でしょう。



3 オフィスに変わって創造性を引き出すための場所が登場する
 では、全ての作業をクラウド上で行うことができれば、ネット上だけで完結することができるでしょうか?
私はそれは難しいと思っていて、やはりリアルに会える場があった方がいいと思います。
ただ、それは現在のオフィスのように毎日通って仕事をする場所ではなく、気が向いたときに一緒に働く人たちが集まって楽しむ場になるでしょう。
GoogleFacebookなどのオフィスはそれを先取りしたようなものになっていて、もはやオフィスとは思えない作りになっています。

独創的なGoogleオフィス
Facebookオフィス

これからの企業、特に先進国の企業の競争力は働く人たちの創造性が源泉となります。
なので、楽しく雑談したり、ゲームをして遊んだりして人々の創造性を刺激する場所となるのではないかと考えています。
そして、そんな環境から新しいアイデアが出てきて新しいビジネスへ発展するのではないかと思います。


4 仕事とプライベート活動の境目がなくなる
 通勤がなくなると土日に休むという習慣もなくなっていくと思われます。
創造的な仕事というのは工場労働のように反復作業ではありません。
いつ新しいアイデアが出てくるかわかりませんし、土日に調子がよくて作業効率があがることもあるでしょう。
したがって、自分のパフォーマンスがいい時に働いて、調子の悪いときは休むというのが自然な働き方だと思います。
また、家族で長期旅行に出ても、旅行中の合間に仕事をするということも可能になるでしょう。
 そして、創造的な仕事は仕事なのか遊びなのかわからなくなっていくでしょう。
私は本を読むのが趣味なのですが、ソーシャルネットの社会的分析について書かれた「みんな集まれ」という本を読んでそこから着想をして一つのサービスを作ってしまいました。
もし、私に読書という趣味がなければ、そういうことも起こらなかったでしょう。
創造的な仕事にとっていわゆる仕事的なスキルよりも趣味や好きなことが大事なのは過去の発明、発見を見てもわかるのではないでしょうか。
ただ、この働き方は自己規制がちゃんとできることが条件になりますが。


 オフィスがいらないというと最近はやりのコワーキングやノマドなどを想像されるかもしれませんが、それらが長期的に定着するためにはまだ何かがかけていると最近感じています。
私自身、コワーキングをよく利用しますが、まだかつてのレンタルオフィスの延長線でしかないという感じです。
ノマドも何もわざわざ外にでなくてもネットもPCもあれば家で作業すればいいし、たまに気晴らしで外に行く程度でしょう。
普通の会社でもそうですが、同じ部屋で働いているからといって人同士の交流がはじまるわけではありません。
何か一緒のプロジェクトに関わったり、相手の考え方に共感したりしてお互いの人となりを知るようになってコミュケーションが始まるものです。
まずは、そういうお互いを知る仕組みや機会があってコワーキングやノマド的なワークスタイルが生きてくるようになるのではないでしょうか。
私はこれからは企業の枠を超えた交流が重要になっていく時代になると思っていますが、そういった意味でもSNSをはじめとしてネット上で人々がコラボレーションできるサービスはこれからもっと重要になると思っています。


 もちろん接客や現場仕事など実際にその場所に行かないとできない仕事は変わらないと思いますが、いわゆるオフィスに通勤して仕事するというスタイルはだんだん少なくなっていくと思います。
結局、企業は利益をあげなければ存続できないのですから、時代の変化とともに変わって行かざるをえません。
日本のような先進国は今までのような製造業的なアプローチでは生き残れない時代になりました。
これからは世界のどこにもない創造的なビジネスを行わないとグローバル経済の価格競争の波に飲み込まれてしまうでしょう。
したがって、企業は人々の創造力を引き出せるように変わって行く必要があります。
そして個人も自分の創造力を発揮できる環境に身を置くことがこれから生きていく上で重要なのではないでしょうか。

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受託開発は敗者のゲーム

f:id:anthony-g:20120320131214j:image:w480
photo credit: rednuht via photopin cc


・ ある会社で見たもの
以前、ある会社で仕事をしていたとき、30年以上も使われているシステムがありました。
それはその当時でも現役で使われていて、その会社の利益の源泉を生み出しているシステムでした。
それを見て、ソフトウェアというのは劣化しない、いつまでも使えるものなのだということを思い知らされました。
そして、ソフトウェアをモノのように売るビジネスはだめだと思いました。
もちろん、開発した会社には開発費用を払ったと思いますが、そんなに長い間使われたらソフトウェアビジネス自体が成り立たなくなると思ったからです。
ソフトウェアを作るというのは結構大変な作業です。
にもかかわらず、受託開発だとそれを特定の企業のために行うので、開発側は単発で終わってしまうことが多くビジネスが広がることがありません。
そういうビジネスのやり方はソフトウェアを扱うには向いていないのではないかと感じました。


・ ソフトウェアの本質
日本では多くのIT企業、特に中小企業が受託開発を行っています。
統計によると日本のIT業界の8割の会社が受託開発をメインに行っているようです。(人材派遣という形態を取る場合も多いですが。)
私がプログラマーだったころ、さんざん受託開発をやりましたが、本当にハードワークでした。
(かなり昔なので今は少し変わってるかもしれませんが。)
ビジネスとしても、特に中小企業は資本力がないのですぐお金になる受託開発は会社をまわすためには必要なビジネスです。
しかし、受託開発は長期的に見ると必ず負けるゲームだと思います。
それは、ソフトウェアが車や家電製品などの普通の商品と違うからです。
では、どういう点が違うのでしょうか?

  • ソフトウェアは劣化しない(永遠性)

通常、モノは使っているうちにすり減ったり、壊れたりします。
しかし、ソフトウェアはそういうことがありません。
使おうと思えば永遠に使うこともできます。
ハードが壊れてリプレースしなければいけないことはありますが、ソフトウェア自体はずっと使えるでしょう。
(新しいハードにあわせてプログラムを修正しなければいけないことはあるかもしれませんが。)
会計的には減価償却というのがあって、あらゆるものは年を経るごとに価値が下がることになっています。
ソフトウェアもそのように扱われますが、実際はソフトウェアの価値は年と共に減らないのでバランスシートが本当の状態を表していない典型的な例でしょう。
ソフトウェアの減価償却

  • 無限にコピーすることができる(無限複製性)

ソフトウェアはいくらでも複製できます。しかも、コストはほぼ0です。
車や家電製品などの通常の商品はコピーしようとすると莫大なコストがかかります。
したがって、自分で複製するよりも企業から買うという行動になりますが、ソフトウェアは自分で複製できます。
もちろん、企業はコピープロテクト知的所有権などで守っていますが、ソフトウェア自体がコピー可能な性質を持っているので不正コピーを完全に防ぐのは難しい状況です。
さらに、無償でコピーOKなオープンソースソフトウェアの登場によりプロプラエタリなソフトウェアの立場はより厳しくなってきています。

  • ほぼコスト0で世界中に配布することができる(配布無費用性)

通常の商品は顧客に届けるまでに多大なコストがかかります。
宅配会社などを使った物理的な配送だけでなく、サポートや故障対応の拠点を作ったり、支社や現地法人を作る必要があります。
しかし、いまやソフトウェアはインターネットを介して世界中にほぼコスト0で配布できます。
海外だと言語の問題はありますが、ユニコードやプラットフォームの多言語化によってかなり解決されています。


こうみると映画や音楽などのコンテンツと同じように見えますが、コンテンツは基本的に個人が楽しむために買う最終消費商品です。
(配給会社などがそれを使ってビジネスをすることもありますが。)
それに対してソフトウェアはそれによって利益を生み出せることができる商品です。
つまり、企業や個人がそれを使って業務を効率化したり、サービスを提供して利益を上げることができるというところが違います。
したがって、コンテンツよりもソフトウェアの方が社会に対するインパクトは大きいと思います。


・ 受託開発というビジネスモデル
そういったソフトウェアの特徴をふまえて、受託開発を考えてみます。
最初にお話しした30年使ってた会社の例のように、ソフトウェアは一度作ってもらえればあとは劣化することなく事実上コスト0で永遠に使うことができます。
つまり、同じ顧客からまた仕事がもらえる可能性は低いということです。
したがって、受託開発会社はプロジェクトが一つ終われば新たな案件を探すことになります。
そして、それぞれのプロジェクトが単発なのでビジネスとして広がることはありません。


次に、ソフトウェアは誰でもほぼコスト0で複製することができます。
したがって、ユーザーがシステムのスケールアウトしたい場合は、簡単にソフトウェアをコピーして増やすことができます。
(コンピューターやディスク装置などを追加で必要になるかもしれませんが。)
パッケージ製品であればライセンスの追加購入という手を使えますが、受託開発だと一般的ではないでしょう。
なので、開発企業は初期開発費用しか取れないという状況になりがちです。


最後に配布コストが0の点ですが、これはソフトウェアを扱うメリットですが受託開発だとこのメリットが利用できません。
なぜなら日本の受託開発の場合、国内企業のみを相手にしている場合がほとんどだからです。
せっかくグローバルでビジネスできる製品を扱っているのにその特徴を利用していないということになります。
さらに日本人にとって英語が障壁となって海外に出にくい状況があります。


このような状況をマクロ的に見た場合、多くの企業が受託開発を行い、ある程度の需要が満たされたら、案件は急速になくなっていく結果となります。
このように日本で受託開発ビジネスを続けることはかなり難しいことがわかってきます。
最近では中国やインドへの開発のアウトソースやセールスフォースなどのSaaS化など海外からの攻勢により、国内だけで受託開発をすることはさらに厳しくなってきています。
確かにIT業界はイノベーションが頻繁に起こるので新たな需要が生み出される場合もありますが、キャズムを超えるイノベーションは限られていますし、技術の入れ替わりが速すぎる状況も現場の人々に負担をかける結果になっています。


もともと、資本主義経済は農作物や衣服など消費されると劣化してだめになっていく製品や消耗品を主にやりとりするために発展してきました。
劣化する商品は壊れたりダメになったりしていつか買い替え需要が出てきますし、消耗品は常に需要が発生する商品です。
現代の企業を見ても、洋服を売っているユニクロやインクを稼ぐネタにしているプリンターメーカーなどが資本主義社会で親和性が高いのがわかります。
一方、ソフトウェアは一度作ったら壊れたり磨耗したりしないので需要が繰り返し出てこない特徴があります。
マイクロソフトなどのパッケージソフトベンダーは頻繁にバージョンアップをしたり、クライアントライセンスで追加料金を取っていますが、Windows XPを使っている人がまだ多い状況を見るとあまり資本主義経済向きの製品ではないことがわかります。


・ これからのソフトウェアビジネス
このようにソフトウェアをモノとして売ることには明らかに無理があります。
ではソフトウェアの特質(永遠性、無限複製性、配布無費用性)を生かしたビジネスモデルはどのようなものが考えられるでしょうか。

  • ソフトウェアをサービスとして売る

ソフトウェアを製品として売るのをやめて、サービスとして売ります。
サービスなので開発費用を請求するのではなく、月々の利用料などの形でお金をいただきます。
そうすれば定期的に収入が発生して会社の経営も安定するでしょう。
もちろん受託開発のように特定の顧客の要求の応じてサービスを提供することもできますが、ビジネス的にはあまりおいしくありません。
それよりもある程度顧客数が見込めるサービスを開発してできるだけ多くのユーザーに使ってもらうほうがいいでしょう。

  • クラウドを利用したオープンソースソフトウェアを中心としたウェブ技術を利用

ユーザーが増えてくるとサーバーを増やしたり、ディスク容量を増強する必要がでてきます。
しかし、いまや多くの企業から提供されているクラウドサービスやVPSサービスを利用すればサーバーのハードを買わなくてもよくなりました。
また、ウェブブラウザ上で動くようにしておけば顧客側PCにアプリケーションをインストールしてもらう必要はありません。
最近ではスマートフォンやタブレットがクライアントとなり、専用アプリを使うことが増えてきました。
しかし、専用アプリもHTML5などのウェブ技術を使えば、これらの機器への横展開もすばやく行うことができます。
(ただし、ウェブUIは色々制約があるので用途に応じてウェブか専用アプリを選択する必要があります。)
そして、サーバー側をオープンソースソフトウェアで構成しておけば、ユーザーが増えてスケールアウトしなければ行けない場合でも追加ライセンスなどの費用をかけずにできるようになります。
(クラウドサービス等で追加インスタンスの費用は発生しますが。)
ただ、オープンソースは多くの人たちの善意によって成り立っていることを忘れてはいけません。
なので、オープンソースを使ってメリットを享受したユーザーはなんらかの形で自分もオープンソースに貢献すべきだと思います。
貢献といってもソフトウェア開発だけでなく、ドキュメントを書いたり、いろんな人に教えてあげたり、できることでいいのでなんらかの貢献をみんなが行えばいい循環で発展していくと思います。

最近はFacebookTwitterなどのSNSが普及して、口コミが広がりやすくなりました。
これは企業、特に営業力を持たない中小企業にとっては非常にいい環境になりました。
したがって、ソフトウェア自体にソーシャルネット的な機能を組み込んで顧客が顧客を呼ぶしくみを入れておけば営業コストをかなり低くすることができます。
そして、ローカライズすれば世界にビジネス展開できる可能性もあります。


こういうモデルはいまさらと言う感じですが、ソフトウェアの特質をふまえた上で考えてみると、また違う見方になるのではないでしょうか。
有名な投資の本で「敗者のゲーム」という本がありますが、ソフトウェアの受託開発はまさに敗者のゲームだと思います。
受託開発は確実にお金になるのでビジネスとしてやっていけそうに思われますが、ソフトウェアの性質を考えると長期的には負ける可能性の高いビジネスです。
これからいよいよ経済がグローバル化していくので、国内だけで受託開発を行うことは難しくなるでしょう。
幸い、クラウドサービスとSNSの普及によりITビジネスが資本のゲームから知のゲームに変わりつつあります。
なので中小企業でも世界を相手にビジネスすることも可能になってきました。
これからはそういう環境で新しいITビジネスを考えていく時期になったのではないでしょうか。


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 もし二十歳の自分に話せるとしたら

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photo credit: Thomas Hawk via photopin cc


昨日は成人の日だったんですね。最近家で仕事をしているので曜日の間隔がないため世間は連休だったんだなと先ほど気づきました。
いろんな方が新聞などで成人に向けての記事を書かれているのをみて、自分は今年二十歳になった人に何か言えるほどえらくはないけど、もし今の自分が20歳だったころの自分に言えることは何かなとふと思いました。


20歳の頃の自分は受験に失敗してやりたいこともなく楽な方に流されて生きていました。
ただ、このころからコンピューターに興味を持つようになり、やりたい仕事が見つかりつつある時期でもありました。
それまで受験というレールの上に乗っていてまわりが見えなかったのが、そのレールから降りて自然と興味のあることに目を向けることができるようになったのかもしれません。


そんな彼にはこんな7つのアドバイスをしたいと思います。


1 まず自分を知ろう


自分のことはわかっているようで、意外にわかっていないものです。
例えば、自分はモノを作るのが好きだから職人に向いてると思ってたのに実際に仕事をしてみると接客の仕事のほうがうまかったりします。
また、今はまだサラリーマン的な働き方が主流ですが、そういう環境に馴染めない人も結構います。
まずは自分がどういう人間なのかを理解して、自分の能力が最大限発揮できる環境に移れるように努力しましょう。
それは、就職かもしれませんし、起業かもしれません。または、海外に行くことかもしれませんし、芸術家的な生き方なのかもしれません。
それは誰もおしえてくれない、試行錯誤しながら自分で発見しなければいけないことなのです。
なので、できるだけいろんなことにトライしてたくさん失敗してください。
そうすればおのずと自分のことがわかってくると思います。




2 自立して生きる


20歳の君はまだ親に依存して生きていると思います。
住む場所は親の家に同居しているでしょうし、もし大学に行っていれば親のお金に頼っているでしょう。
しかし、いつかは親の扶養から離れて自分で稼いで生きていかなければいけません。
親もいつか年老いてあなたが介護したり面倒みなければいけなくなる時がくるでしょう。
なので、できるだけはやく自立できるように生きたほうがいいと思います。
それは経済的な自立だけではなく、自分の人生は自分の責任で決めていけるようにすることです。
現実的なことをいうと、親というのは自分の子供を自分の思い通りにしようとするものです。
例えば、自分の仕事を子供に継がせようとしたり、自分の決めた相手と結婚させようとします。
もちろん親心があってそういうことをするという面もありますが、親も自分の欲望があって子供を自分の思い通りにしたいと思っています。
しかし、親の言うとおりに生きるのでは自分の人生を生きているとは言えないでしょう。
そういうしがらみから抜け出すためにも、これからは自分一人で生きていくんだという覚悟をはやくもつべきです。




3 自分の直感を信じる


君はまだ20歳なので社会のことはまだ何もわからないと思います。
なので大人から社会はこういうもんだと言われるとそうなのかなと思ってしまうかもしれません。
しかし、自分が何かおかしいなと感じたらまずは自分を信じてみましょう。
例えば、こんな話がありました。
ある人は会社で働いていたのですが、お金をためてアメリカの大学にいくことにしました。
それを上司に言ったところ、君の年齢で留学してももう遅いと言われました。
その人はもうすぐ30歳だったのですが、自分の直感を信じて留学しました。
その後、日本では英語のできる人材が求められるようになり、その後の仕事にとても役に立ちました。
大人は過去のことに縛られているので社会はこういうもんだと思い込んでいる人が結構います。
そんな人たちの言葉は信じないで、自分の人生は自分で考えて決めていくべきです。




4 やりたいことは今からはじめる


20歳の君はお金もないし、まだちゃんとした仕事にもついていないかもしれません。
なのでやりたいことがあっても、まずはお金を稼げるようになってからやろうと思っているかもしれません。


こんなエピソードがあります。

ある投資家がバカンスで南の島に行きました。
浜辺を歩いていると若者が貝でとてもきれいなアクセサリを作っていました。
それを見た投資家は若者にそれをたくさん作ってビジネスにしないかともちかけました。
若者「これをビジネスにしたらどうなるのですか?」
投資家「たくさんお金が儲かってお金持ちになれますよ。その後は南の島ででも悠々自適に暮らせますよ。」
若者「それなら今、私がやっていることですね。」




例えば、本を書いてみたいとか音楽を作ってみたいなどお金にはならないかもしれないけど、今からやろうと思えばできることは結構あると思います。
もしそういうことがあるのなら、お金が稼げるようになってからなんて思わず今からやるべきです。
人生はやりたくもないことをやってられるほど長くはありません。




5 お金で仕事を選ばない


社会に出るとお金を稼ぐために仕事をしなければいけません。
なのでたくさんお金をもらえる仕事がいい仕事だと思いがちですが、必ずしもそうではありません。
例えば、ある企業向けコンサルティングの仕事をしていた男性はたくさん給料をもらっていましたが、休みなしで働いて家族と過ごす時間もありませんでした。
そのために家庭は崩壊し、その人は奥さんと離婚することになってしまいました。
また、あるエンジニアはもう将来性のない製品のサポートをしていました。
この人も給料はたくさんもらっていましたが、技術革新についていけなくなってエンジニアの仕事から引退しました。
2012年の今はサスティナビリティという言葉で呼ばれていることなのですが、仕事は人生の中で長い間やらなければいけない行いです。
なので仕事をお金だけで選ぶのではなく、自分の人生とマッチしているのか、その仕事ややり方が持続可能なのかを考えて選ぶべきです。




6 他と比べない


20歳の君の時代は今、とても景気がいいと思います。
後にバブルと呼ばれるのですが、大学にいった友人はみな一流企業に就職していることと思います。
それにひきかえ自分はだめだと思っていませんか?
未来のことを内緒で教えましょう。
彼らの多くは名前だけで就職先を決めたので、後にうつ病になったり会社をやめたりしています。
自分にあわなかったんですね。
また、その後多くの大企業ではリストラが行われたり倒産したりしました。
世の中絶対安泰なものなどありません。
長い人生の中ではいい時も悪い時もあります。
悪い時に一時、人よりみじめだと感じてもそれがずっと続くわけでありません。
なので君は君の道を進めば大丈夫。
これからの人生は人と比べるのではなく、自分だけの人生を生きていってください。




7 人にやさしく


君はこれからいろんな人と出会うと思います。
人を騙したり利用したりする人ともたくさん出会うでしょう。
そういう人たちばかりだと人間不信になってしまうかもしれません。
しかし、君が人と接するときはできるだけ相手にやさしくしてあげましょう。
ことわざで「情けは人のためならず。」というのがありますが、これは人を甘やかしてはいけないという意味ではなく人に情けをかけると自分に返ってくるという意味です。
人は完璧ではありません。
しょうがない人だなと思ってもできるだけその人のいいところを見るような寛容な心を持つようにしてください。
そうすればいい人間関係が持てるようになるでしょう。




20歳になったばかりの君にいうのはどうかと思いますが、人間はいつか必ず死にます。
その死ぬときにいい人生だったと思えるように精一杯生きてください。
誰の人生でもない君だけの人生を。

仕事をうまくやるためのコツ

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photo credit: hufse via photopin cc


日々仕事をしていると、どうもうまくいかないとか効率よくこなすことができないと感じることはありませんか?
それは、現代の仕事の内容がより脳の能力を酷使する状況になり、人々がそれに対応できなくなってきているからなのかもしれません。
最近の脳科学では人間の脳の働きが少しづつ解明されつつあり、仕事にも生かせる知恵がいくつかあります。
それをまとめてみました。

  • 懸案事項を全て書きだす(GTD仕事術)

多くの働く人たちは日々圧倒される数の仕事に直面することも多いと思います。
例えば、複数の仕事を並行して行う状況に追い込まれることが結構発生します。
そうすると頭の中が様々な仕事のことを考えなければいけなくなり集中力が下がってしまいます。
人間の脳はこれをしなければと考えているだけでかなりのエネルギーを使っています。
こんな時は懸案事項を全て書きだして頭の中をからっぽにします。
こうすることにより、いまやるべきことに集中することができるようになります。

  • 目に見える形にする。(見える化)

人間の脳はあいまいで抽象的なことを考えるのが苦手です。
たとえば、ある仕事をどこまでやったか本人だからわかっているつもりでも、実際に今どのくらいまで達成したかちゃんとわかっていなかったりします。
これを作業をリストにして終わったものをチェックしていけば、今まで何をやったか一目瞭然となります。
また、ものごとを見える形にするとフィードバックとして脳で情報が再処理されて新たな発想に結びつくようになります。

  • 把握可能な大きさに分割する(分割統治)

人間の脳が把握できる量にはかぎりがあります。
ある実験によると、組織のメンバーが100人を超えると全員のメンバーを覚えることが難しくなっていくそうです。
大きすぎて一度には把握できないものは分割して、把握できる大きさにしてから理解する必要があります。
例えば、人が多すぎたらグループ分けするとか、複雑な作業はお互い関連性のない基本的な作業に分割するなどです。
そうすれば、全体像を把握することができ、分割した部分の中だけで詳細な事について検討することができます。

  • まずは問題に対する解決を自力で考えてみる(論理的思考)

特に学校で成績がよかった人が陥りがちがことですが、問題解決の方法をネットや文献など他の人が考えたことに求めてしまう傾向があります。
例えば、最近アジャイル開発というのがソフトウェア開発では一般的になってきましたが、何が何でもアジャイルと考えて解決しようとする人が結構います。
しかし、その方法が本当に自分たちの環境にあっているかわかりませんし、あわせるために新しいことを考える必要があるかもしれません。
まずは、今ある知識だけで自分で考えるくせをつけましょう。

  • 仮説を実行し、うまくいったか確認する。失敗した場合はその理由を調べる。(仮説-実行-フィードバック)

現代は答えのない問題を自分で解決しなければいけないことが多くなっています。
例えば、これからどんな製品が売れるかは高度成長のころはある程度予測できました。
しかし、現代のようにモノに溢れている時代は何が売れるかわかりません。
そんなときはまず仮説を立てて、それを試して結果を見るという作業が必要になります。
そして、その結果をフィードバックしてまた仮説を組み直すという繰り返し作業になります。

例えば、東京には電信柱が何本あるでしょうか?
普通に考えたらわかるわけがないと思ってしまうかもしれません。
しかし、東京の人口や電信柱の間隔などから大まかな推定は可能です。
これと同じように日々の仕事でも情報が限られている状況で予測しなければいけないことが結構あります。
そのような場合でも、少ない情報から推測することができればいろんな場面でとても役に立ちます。

  • いつもハッピーな気持ちでいること(ポジティブ心理学)

多くの人は成功したから人は幸せになれると思っていますが、実は逆です。
つまり幸せと感じている人が成功する傾向にあるのです。
脳科学の一分野であるポジティブ心理学によると、人は幸せを感じると想像力や仕事のパフォーマンスが増すそうです。
例えば、仕事中にオフィスの人にお菓子を配ったりすることがあると思いますが、こんななにげない心遣いでももらった人たちのパフォーマンスを改善することに大きな影響を与えています。
また、個人でも失業するかもしれないとか責任を問われるかもしれないなど、ネガティブなことばかり考えていると自分のパフォーマンスが落ちてしまいます。
もちろん、そういうネガティブなことを考えなければいけない状況もあるでしょうが、そればかりで頭をいっぱいにするのではなくこれができたらすばらしいという前向きな気持ちを持つようにすればおのずと仕事のパフォーマンスもあがるようになります。


ここに書いてあることは、私が実際に失敗したり他の人たちの失敗を見て学んだことです。
そのことがたまたま本に書いてあったりして、誰しも同じような失敗をするんだなと思います。
やはり、仕事は失敗から学んで改善していくのが醍醐味なのかもしれませんね。

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