MBAと一神教

以前、ある小さい会社を経営されている若い社長さんとお話ししていたときその社長さんが「私はMBAコースで勉強しようと思う。」と言われたので私が「あまり役にたたないと思いますよ。」というと怪訝な顔をされました。
MBAを持っていない私が言っても信憑性がないのですが、私も少し興味があってMBAの内容を少し勉強したことがあります。
それで思ったのはあんまり信用できないなという印象でした。


例えば、企業で行っているビジネスを4つのタイプ(花形スター、問題児、金のなる木、負け犬)にわけて管理するPPM(プロダクトポートフォリオマネージメント)という考え方があります。
アメリカの経営コンサルの会社が考えたのですが、ビジネスのタイプによって資源投入の配分などを行ったりするときに使うようです。
しかし、もし自分の会社の経営者がこんな考え方でやっていて例えば自分が負け犬の事業にアサインされていたら一気にやる気をなくしてしまいます。
MBAの教えていることを見ていると時々彼らは人間を相手にしているということを忘れているのではないかと感じることが多いです。


また、会計の世界では減価償却という考え方があります。
これはモノは買ったときが一番価値があって古くなるにしたがって価値が減っていくという考え方です。
しかし、ちゃんとメンテナンスしていれば価値が下がらないものもあるし、ビンテージの洋服や楽器のように古いから返って価値が出るものもあります。
そういう例外がいっぱいあるのに一神教のように自分の考え方が唯一正しいとするのにうさんくささを感じます。


一神教といえば、もともと中世以前は宗教は人々の考え方の基本でした。
キリスト教であれば聖書に書かれていることが絶対正しくてそれ以外は認めませんでした。
ガリレオの地動説が教会から異端とされたのはそんな時代の話でした。
時代が変わって現代は科学が宗教に取って代わりました。
MBAで教えていることは科学とは言えないのかもしれませんが、アカデミックな学問としては科学と同列のものでしょう。
しかし、経営学や経済学は数学や物理学のようなしっかりとした理論の基盤がないように感じます。
数学であれば証明によって、物理学であれば実験によってその理論の正当性を判定します。
しかし、経営学や経済学にはそれがありません。
経験則や主観によって理論を構築しているのではないかと私は感じてしまいます。
その証拠にテレビで話しているエコノミストや経済学者の発言が間違っていることが多いですよね。
特に経済学ってみんな言うことが違うので本当にいい加減だなと思います。


最初に出てきた会社の社長さんは立派に自分の会社を経営されています。
MBAなんかよりその方がとても大事なのではないかと私は思います。
大学の偉い先生から経営の秘伝を教えてもらえると思っているのでしょうが、そんなものがあれば誰でも会社経営ができるようになるでしょう。
しかし、会社経営はそんな簡単なことではありません。
そもそも学問というのは普遍的な法則や考え方を構築する行いです。
しかし、会社経営なんて企業ごとにちがうし、国によっても違います。
それなのにこの考え方が唯一正しいなんて言えるわけがないと思います。


MBAなんてこんな考え方もあるんだなーくらいのものなんじゃないでしょうか。


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