日本はこのまま衰退するのか。

バブルが崩壊してもう20年がたちましたが、日本経済は相変わらず低空飛行を続けています。
その中で財政赤字は膨らみ失業率はどんどん上がっています。
そしてこの給料が上がらない状況で国は増税をしようとしています。
なぜ、こんなことになってしまったのでしょうか。
それは日本社会が活力を無くしてしまったからだと思います。
ではなぜ活力が無くなってしまったのでしょうか?


1 能力を評価しない(できない?)
日本企業は人の評価を能力では評価しません。
青色ダイオードの中村さんの例を見てもわかるように、個人にあまりにも大きな評価をすることを極端に嫌います。
私が日本企業で働いていていた時、社内では誰も知らない最新のIT技術を自分で勉強していました。
そのうち、社内で噂になりその手の仕事は全て私に回ってくるようになりました。
そうすると首が回らなくなるくらい忙しくなったのですが、残業代は増えましたが能力を評価されることはありませんでした。
そこで感じたのは日本企業であまりできるところを見せると貧乏くじをひくということでした。
こんな経営をやっていたら誰も勉強してスキルをあげようなどとは考えないでしょう。
日本人は学歴やステータスなど仕事の能力とはあまり関係のないものは評価するので、みんないい大学やいい企業に入るためには一生懸命勉強します。
しかし、スキルをあげるための努力はあまり評価されないのでこんなことになってしまったのでしょう。
そのようなことをやっているからやる気のある人たちが逃げていって残った人たちは現状維持派ばかりになってしまったのだと思います。


2 天下り企業による民業圧迫
日本のほとんどの基幹産業は官庁が深くかかわっています。
電気は東京電力などの地域電力企業、通信はNTT、鉄道はJRなど株式会社といえども官庁との癒着が強い企業ばかりです。
また、独立行政法人やその関連企業などによって民間が行うような仕事までもが半官半民のような組織が行っています。
こんな国で新たにビジネスを行うのは難しいでしょう。
ベンチャー企業などの起業率は先進国では国が成熟するにしたがって増えていくものです。
しかし、日本は先進国としては世界では類をみないほどの低起業率です。
これは国策企業を頂点とした産業構造が新しいビジネスが出てくるのを阻害しているのでしょう。


3 過去の成功体験に固執して世界の変化に適応できていない
日本はいまだに製造業重視の産業構造になっています。
しかし、世界の歴史を見れば国が成熟するにしたがって主要産業が変わって行かざるを得ないことがはっきりわかります。
例えばイギリスは産業革命によって世界で最初に製造業を産業にした国でしたが、その後長い間英国病と呼ばれるような停滞の時代に入ってしまいました。
アメリカも自動車や電気機器の企業が多く誕生しましたが、日本の台頭で製造業がだめになってITや金融に主要産業がシフトしていきました。
今度は日本がそのような状況になる番でしょう。
このように産業の栄枯盛衰は避けがたいことですが、日本のえらい人たちはまだ過去の栄光にすがっているように見えます。


4 終身雇用による人材が流動化しない状況
終身雇用は崩壊したとはいえ、多くの日本人はまだその幻想にとりつかれています。
住宅を35年ローンで買う人が多いのもその証拠でしょう。
いつ仕事がなくなるかわからない状況ではそのような大きな借金はかなりのリスクです。
しかし、いまだに横並び意識が抜けずみんなが持っているから自分も買わなければいけないと思うから無謀な借金をしてしまうのでしょう。
そんな大きな借金をしてしまうからモチベーションのあがらない仕事をいやいや続けるという生き方をせざるを得なくなるなります。
その結果、転職がしにくい社会になって人材が流動化しなくなってしまいました。
アメリカではいい給料をもらえるように多くの人は衰退した産業から成長する産業へと転職していきます。
日本ではそれがしにくいから産業転換が進まないのでしょう。


5 リスクを極端に嫌う日本人
就職活動中の学生の人気の勤務先は役所か大企業だそうです。
日本の起業率は世界最低で、世界では産業構造が劇的に変化しているのに日本は高度成長のころから基本的には変わっていません。
このまま変化を拒否しつづけていると世界から取り残されていくでしょう。
今、日本人に必要なのは現実を直視して希望をもって対応していくことなのですが、みたくないものを見ないという行動をとっています。


それでは、このような状況をよくするためにはどうしたらいいでしょうか?
経済評論家は産業構造の転換や政治体制の改善などが必要といいますが、本当に必要なのは私たちひとりひとりが元気になることなのではないでしょうか。
そうすれば国全体も元気になっていい方向に向かうと思います。
では、どうすればみんなが元気になるのでしょうか?


1 みんなが好きなことをやる
お金になろうがなるまいが、好きなことをやることが人にとって一番の幸せではないでしょうか。
それはボランティアでもいいでしょうし、世界中を旅をして見聞を広げたり、小説を書いたり音楽を作ったりする芸術活動でもいいでしょう。
それをすることによって一人一人が充実した人生を送り元気になることが国全体にもいい影響を与えると思います。
ただ、現代の資本主義社会ではお金を稼がないと生きていけないので仕事が人生の中で占める割合は大きいと思います。
したがって、自分が意欲をもってやれる仕事をすることも重要でしょう。
そのためにも多くの起業によっていろんな仕事が出てきて自分の能力を役立てる機会が増える社会がこれから必要なのではないでしょうか。


2 コミュニティ再生
戦後、職を求めて多くの人が都会に住むようになってコミュニティの役割が農村から企業に移っていきました。
終身雇用や家族主義などにより企業は社員を一生面倒をみる形になりましたが、バブル以降は企業のコミュニティ機能が衰退していきました。
そして、いまや人々はばらばらになり頼るべきコミュニティを失ってしまいました。
人類は今まで群れで生きてきた生物です。
人々がこれだけ不安になっているのは、職を無くしてお金が入ってこなくなることもありますが、コミュニティと断絶して孤立してしまうことが一番不安なのではないでしょうか。
では、これからのコミュニティというのは何になるのでしょうか?
それは住んでいる地域かもしれないし、同じ趣味を持つ人たちかもしれません。
アメリカでは会計士やエンジニアなど同業種のコミュニティがビジネスで大きな役割を担っているそうです。
また、かつての企業でのコミュニティのように多くの時間をひとつのコミュニティで費やすのではなく、複数のコミュニティに所属して生きていくようになるかもしれません。
そういうコミュニティがたくさん作られてお互い助けあうことができれば安心して生きていけるようになるのではないでしょうか。


3 なぜ働くか?
普通、なぜ働くかと聞かれれば食べていかなくてはいけないのでお金を稼ぐために働くと言う人が多いと思います。
しかし、本当にそうでしょうか?
お金は現代社会で生きていくために必要なものです。
したがって、それは目的ではなく生きていくための前提条件です。
では、仕事の目的はなんでしょうか?
仕事は誰かから求められないと発生しないものです。
いくら自分がよかれと思っていても誰も求めないようなことをやってもそれは仕事とはいいません。
仕事は求められて人のため、さらには社会のため行うことであり、お金はその感謝の意味として受け取るものではないでしょうか。
したがって、仕事とは自分は人のためにどういう役に立つのだろうというところが起点となるべきだと思います。
そして人から必要とされている存在になれればその人にとっても人生を充実したものにできるではないでしょうか。


幕末や戦後の頃の日本は国内が混乱して多くの人にとって厳しい時代だったと思います。
しかし、幕末は坂本龍馬をはじめ国を変えていこうとした人たちが出てきましたし、戦後もいろんな人たちが日本を立てなおそうとがんばりました。
そういう時期は本当は自分らしく生きれるチャンスの時であったのかもしれません。
古い因習が打ち破られ新しい時代を作っていけるいい機会だったのだと思います。
現在の日本はまだそのような状況にはありませんが、このまま変わらず行けばいずれ臨界点に達して一気に変化せざるを得なくなるでしょう。
その時こそみんながやりたいことをやれるときかもしれません。
そして、その時はすぐそこまできているような気がします。

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人に会う

先日、あるきっかけで名刺交換した人から会いたいといわれたので会ってきました。よくは知らない人だったのですが、いろんな人に会う活動をされているみたいだったのでお会いしたのですが、結局は営業でした。
忙しい中、時間をさいて会うのだからなんらかの見返りを求めるのは仕方のないことなのでしょうが、下心があることがわかった時点でこちらもがっくりしてしまいます。


私は人見知りなので初対面の人と話すのは苦手ですが、それが苦もなくできる人はすばらしい才能を持っている人だと思います。
それを金儲けのためだけに使っているのはもったいないですよね。
人と話すというのはいろんな人からいろんな見識に触れて自分を成長させられる機会だと思います。
古代ギリシャの哲学者ソクラテスは町でいろんな人をつかまえて話をして哲学を深めていきました。
見識のある人は相手がどの程度かというのもわかってしまうものです。
こいつは何かを売りつけようとしているというのもすぐ察知するでしょうし、教養のレベルやどういう信念をもっているかも少し話せばわかってしまいます。


また、人に会うというのは相手の話を聞くということでもあると思います。
よくインタビュアーで自分の意見を話す人がいますが、役割とやっていることが矛盾しています。
今回も会いたいと言われたので行ったのに、聞きたくもない営業トークを聞かされただけでした。
営業の人はこういう行いが相手にどれだけ失礼なのかわかってないんでしょうね。
人の言葉をさえぎるように話す人とはあまり会話したくないですね。
相手と仲良くなる一番の方法は相手の話を聞くことだと思います。



私もよく人の話を聞いてないと言われるので他山の石として反省すべきだと思っていますが、人の話を聞くというのは本当は難しいことなのかもしれません。
相手に関心をもって心の底から反応するというのをちゃんとできる人は結構少ないと思います。
少なくとも自分が関心を持つ人とはちゃんと話が聞けるようになりたいなと思います。


キャッチセールスにつかまってそんなことを考えてました。

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資本主義がエンジニアをだめにするのか

企業は利益をあげなければいけません。
したがって、売り上げを最大化し経費を最小化する圧力が常にかかっています。
通常売り上げを増やすのは非常に難しいため、経営者は経費カットという安易な方に流れがちです。
それが妥当な理由だといいですが、現場のわからない人たちが予算を組むために現場では綱渡り的な状況で業務を行わざるを得なくなっているところも多くあります。
そのような状況がエンジニアをだんだんだめにしていっているのではないかと感じるようになりました。


その典型が福島第一原発でしょう。
あの原発の話を聞いて、かつてエラー処理が入っていないプログラムを作った業者の話を思い出しました。
どちらも通常の状態では問題なく動いていますが、何か非常事態が起こったら致命的な障害が発生します。
程度の差はあるでしょうが、この二つは同じ構造を持っています。
プログラムのエラー処理も原発の災害対策もコストがかかります。
しかし、資本主義の世界ではコストを嫌うために都合の悪いことはみないというバイアスがかかります。
特に企業のような組織では内部で危ないと個人が警告してもトップの意向や組織内の空気によってつぶされてしまいがちです。


また、エンジニアリングは資本主義とはなじまない部分があるのではないかと思います。
IT業界ではマイクロソフトやシスコが大きくなりましたが、彼らの製品はバグという欠陥がたくさんあり長期間それらが放置されていることは業界の人はみんな知っています。
どちらの会社もマーケティング優先のビジネスで生き残ってきたので製品の品質は二の次になってしまったのでしょう。
他方、Linuxをはじめとするオープンソースプログラムは非常に品質のいいものになりました。
(そうでもないという意見もありますが。「オープンソースは品質が良い?」
もちろんオープンソースにもバグはあって使えるようになるまで時間がかかりますが、多くの人がソースを見ることができるため誰かが修正してだんだん改善されていく性質があります。
また、オープンソースはエンタープライズ方面が弱いといわれますが、現場で多く使われていくにしたがって品質はあがっていくものと思われます。
オープンソースの世界を見ていて思うのは本当にやる気のあるエンジニアが作らないといいものはできないんだなということでした。
エンジニアにとっての本当の報酬はストックオプションやボーナスではなく面白い仕事なのだと思います。


また、資本主義がエンジニアにとってよくないのは、内部を隠蔽する傾向があることです。
資本主義社会で企業が生き残るためには希少性や差異が重要になります。
つまり、そこでしか買えないとか他社とは違うというところがないとお金儲けができないということです。
そうすると企業は内部を隠蔽したり、特許などで権利を守ろうとします。
たとえばマイクロソフトなどのソフトウェア会社は自社製品のソースコードを公開していません。
そうするとエンジニアはそれらの製品をブラックボックスとして扱わざるをえなくなります。
その結果、コンピューターがどう動いているかとかソフトウェアはどう作られているかを全く知らないエンジニアが増えてしまいました。
これもシステムがちゃんと動いているときはいいのですが、何かトラブルが起こるともうお手上げになってしまいます。
福島第一原発でベントが遅れた理由はマニュアルを見ながらの操作が基本だったため、手動で排気弁をあける方法を調べるのに手間取ったからだったそうです。
もし、発電所の内部に詳しい人がいればメルトダウンは起こらなかったかもしれません。


これは資本主義に対する一方的な見方かもしれません。
資本主義にもいい面があって自由に誰でも市場に参加できるというのは民主主義にも通ずるすばらしい点だと思います。
しかし、グローバル化が進んで毎日利益に追われる人生が幸せなのかと個人的には疑問を感じます。


そんな中でそういう資本主義に対抗しようとしているIT企業も出てきました。
Googleはその最初の企業かもしれません。
彼らは会社の支配権を手放さないように優先株という方法を用いました。
優先株とは議決権の強い株です。
今はかなり希薄化してると思いますが、IPO当初は創業者はかなりの支配権を持っていました。
また、Facebookも創業者が投資家から追い出されないようなスキームを組んでいるそうです。
シリコンバレーの創業者の多くはVCに煮え湯を飲まされているので学習したのでしょうね。
こういうのを見るとこれからは資本主義をうまく制御できるような社会になるかもしれません。


これからはエンジニアも自己主張していかないといけない時代なのだと思います。
そして、金儲けが全てに優先する社会ではなく、働く人や消費者そして社会全体がよくなるような社会にすべきだと思います。

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 メディアとしてのIT

前のエントリー「デフレのITビジネス」ではあまりにも製品の陳腐化が激しいため価格の下落が激しいということを書きました。
そして、受託開発や派遣ビジネスなどIT業界で主なビジネスモデルがITゼネコンの凋落やグローバル化によって斜陽産業化しつつあります。
これは日本だけでなく、主要先進国の企業ではどこでも中国やインドなどの新興国にアウトソースすることによって人件費を下げようとしています。


このように見てくるとITビジネスは絶望的に思われますが、実は希望の光が少しだけあります。
まず一つ目はスマートフォンとタブレットの隆盛です。
iPhoneの爆発的な人気からはじまりiPadAndroid携帯など多くのユーザーがスマートフォンを持つようになりました。
それにしたがってスマートフォンのアプリの需要も増えていまやスマートフォン開発者は引く手あまたです。
これからはまちがいなくPCは衰退し、クライアントマシンとしてはスマートフォンとタブレットが主流になるでしょう。


次にFacebookTwitterなどのソーシャルメディアの台頭です。
2004年くらいから日本でもMixiなどのSNSが出てきましたが、サブカル的な性格が強くビジネスに利用されるまでにはいたっていませんでした。
しかし、去年くらいからFacebookTwitterが日本でもブレイクし、大人が使えるサービスとして定着してきました。


このようなIT業界の状況を見ていて気づいたのが、これからのITの目的はメディアの創出なのではないかということでした。
AppleiTunesという音楽やアプリを配信するメディアを作りました。また、タブレットでは電子書籍のメディアを作ろうと各社しのぎを削っています。
これらのメディアはどちらかというと提供者側からの一方的な性質が強いのでマスメディアのネット版と言えると思います。


次にFacebookTwitterはソーシャルメディアという人々の数珠つなぎ的な関係をネット上に実現しました。
YouTubeUstreamは動画を通して、またFourSquareは現在いる位置を使って人々をつなぎました。
こちらは口コミ的なメディアのネット版でマスメディア的なものより情報の伝搬力は強い傾向にあります。


マクルーハンは「メディアはメッセージである。」といいましたが、例えばiTunesは音楽提供者の表現の欲求なのかもしれませんし、Facebookは組織に縛られている個人の自由への渇望がメッセージなのかもしれません。
そういったメッセージを増幅し広めていくことを多くの人が望んでいるように思えます。


コンピューターは計算する機械であり、企業では仕事を自動化し効率化する道具として発展してきました。
しかし、ネットワーク化されたことによってメディアとなり人間の神経を拡張する機械へと進化したのだと思います。
これからITは人減らしの内向きな目的ではなく、メディアを作り出し人間のコミュニケーション能力を拡張する手段として発展していくのではないでしょうか。

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デフレのITビジネス

先日、家電量販店へプリンターを買いに行ったのですが、あまりの価格下落に異様な印象を受けました。
プリンターだけではなくあらゆる家電製品のここ最近の価格の下落は加速度を増しているような印象を受けます。
これはIT製品がゆえの結果なのではないかと思いました。


どういうことかというとIT製品というのは指数関数的に性能が上がるからです。
有名なムーアの法則では「集積回路上のトランジスタ数は18ヶ月ごとに倍になる」とされています。
それを証明するかのようにCPUのスペックは以下のような経緯をたどってきました。


・1971年     4ビット
・1970年代前半  8ビット
・1970年代後半 16ビット
・1980年代   32ビット
・1990年代   32ビットが主流、サーバ用などに64ビットRISC
・2000年代   64ビットが主流
・2000年代後半 64ビットマルチコア


(引用 マイクロプロセッサ(パソコン用CPU)の歴史http://www.kogures.com/hitoshi/history/pc-cpu/index.html


これを見るとほぼ10年ごとに次世代CPUに世代交代が起こっています。
そしてCPUのビット数が上がると扱えるデータ量が指数倍に上がります。


4ビット->8ビット 16倍
8ビット->16ビット 256倍
16ビット->32ビット 65536倍
32ビット->64ビット 4294967296倍


このようにCPUの性能向上の速度が加速しているのがわかります。
(ただ、最近はムーアの法則の限界によってマルチコアの方向に変わってきています。)
これはCPUだけについての話ですが、メモリーやディスク、ネットワーク帯域、ソフトウェアの機能なども同様の状況が見られます。


これは何を意味するかというと製品の陳腐化が激しくて、価格下落が起こりやすいマーケットだということです。
最近は中国やインドなどの新興国の台頭などもあり価格下落がさらに進んでいます。
経済の需要と供給の法則からビジネスでは希少性のあるものに対して高い価格がつきます。
しかし、IT製品はいまや空気や水のように大量に供給されているため価格が下がってしまったのだと思われます。


こう考えると高コストの日本でITビジネスを行うことはこれから難しくなるでしょう。
その証拠に受託開発や派遣といったビジネスがだんだん成り立たなくなってきていますが、それはソフトウェア開発は中国やインドへアウトソースされているのも理由の一つです。
また、アメリカの製品を日本に持ってくるというビジネスもSaaSやクラウドなどによって日本の拠点がなくてもビジネスが可能になりつつあります。
さらにITゼネコンと呼ばれていた体制も政府の財政赤字や大企業のグローバル化などによりほぼ崩壊している状況です。
こう考えるとガラパゴス化していた日本のIT業界はかなり崖っぷち状況にあると思われます。


このように絶望的な状況ですが、いくつか希望の光も見えています。
次回はそれについて書きたいと思います。

逆から考える

先日、友人とビジネスの話をしました。
彼はいまはやりのスマートフォン開発をどんどん受託開発すべきだといいます。
いまはエンジニアも少なく案件も多いから仕事のない今の時代には数少ないビジネスチャンスだと思ったのでしょう。
しかし、スマートフォン開発は手間の割には単価が安くiPhoneの場合はAppleがかなり厳しく統制しているのでリスクも結構あります。
また、受託開発は単発仕事なので経営が安定しません。
いまや受託開発でビジネスとして成り立っている企業はほとんどないのではないでしょうか。


ビジネスの上で重要なのは何をやるかではなく何をやらないかだと思います。
スマートフォンはこれからも買う人は増えるでしょうが、ブームはしばらくすればおさまっていくでしょう。
そんな短命なビジネスにエネルギーを使うのではなく持続するビジネスを考えるべきでしょう。
製品や技術からビジネスを考えるのではなく、人々はこれから何を欲するのか、時代はこれからどう動くかから考えてビジネスを作っていくべきだと思います。


ただ、人というのは未来を予想することは得意ではありません。
今回の地震で起こった福島第一原発の事故も10mを越える津波が来るなんて誰も予想できなかったでしょう。
しかし、原発への電気の供給がストップしたらどうなるかは事前にシミュレートできたはずです。
最初からそんなことはありえないとした思考停止が今回の事故の最大の原因なのだと思います。
人はどうしても時系列の順番で考えがちです。
地震がきた、津波が起きた、電気系統がだめになった、事故になった
そうではなく逆から考えるほうが正しい判断ができるのではないでしょうか。
つまり、事故が起こったなぜならば電気系統は全てやられたからと考えます。
理由はわからないけど、そういう状況になった場合どうすればいいかと考えれば不測の事態にも対処できるようになるのではないでしょうか。
このような結果から考えるというのは「いかにして問題をとくか」という数学の本に書かれていた方法なのですが、あらゆる問題に適用できるすばらしい考え方だと思います。


ビジネスの場合でも、例えばこれから人々が扱う情報が爆発的に増えてくると自分のPCで全部管理することは難しくなるでしょう。
これからはテキストデータだけではなく、音楽や電子ブック、動画など様々なデータを多くの人が持つようになります。
それらのデータを安全に保管し、簡単に編集、コピーなどができるようなサービスが必要とされると思います。
その場合、こちらはどのようなことができるかを考えればひとつのビジネスになるかもしれません。
しかし、やっているうちに最初に考えたものと実際の需要が違うかもしれません。
そのときは柔軟に考えてビジネスの内容も変えていくべきでしょう。
以前ブログにも書いたLean Startupという考え方が使えると思います。


ビジネスにしても事故にしてもどうなるかわからない予測不可能な状況を相手にしなければいけません。
そんなときは逆から考えて問題が発生している状況をまず考えることが重要です。
そこから長期的に持続する新しいビジネスや事故に強いシステムが作れるのではないでしょうか。

いかにして問題をとくかいかにして問題をとくか
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東北地方関東沖地震

今回の地震は日本に大きな被害をもたらしました。
こんな時こそ助け合いが必要です。


現在、いろんなところで募金活動が行われています。
こちらのページにネット関連企業の募金活動がまとめられています。


東北地方太平洋沖地震にWeb/携帯から募金する方法まとめ
http://r.nanapi.jp/24717/


もしよかったら募金してください。
(私もYahooで少額ながら3000円ほど募金させていただきました。)


今回の地震が発生したとき、私は東京都心のオフィスにいました。
新しい超高層ビルで外資系企業が多く入っているビルでしたが、地震のときは大きな音を立てて揺れていました。
あまりにも揺れが大きいので建物が潰れてしまわないか心配しましたが、なんの損傷もなく無事でした。


しかし、その後家に帰ろうとしても電車がすべて止まってしまって歩いて移動するしかありませんでした。
道には人や車があふれ、その光景は難民そのものでした。


また、知り合いの安否を確認するために電話しても全く繋がらない状況でした。
特に携帯電話が全くつながらなくて、固定電話がかろうじてつながりやすい状況でした。


今回の地震で思ったのは、人の作ったものはなんと脆弱なのかということでした。
建物や交通システム、通信システムなど人が作るものは最初に設計する必要があります。
建物などではどれくらいの震度に耐えられるかを想定して設計します。
しかし、それ以上の震度の地震がきたら想定外なので壊れてしまうでしょう。
通信システムも設計段階で想定したキャパシティを超えたときの対処は考慮していません。
(これは経済的理由だとは思いますが。)
福島原発で起こっている事故も地震が起きたときの対策はとっていたのでしょうが、そのしくみが動かなかったときの状況は想定外だったのだと思います。


つまり、人間の想像力を越えた状況になってしまうと設計したシステムは破綻してしまいます。
もちろん、経済的理由でできないということはあるでしょうが、命にかかわるものは少しくらいコストがかかっても十分な対策を講じておくべきだと思います。


しかし、今回はそのような状況を現場の人たちがカバーしてくれたのだと思います。
電車も深夜12時ころには私鉄が走り出しましたし、停電していた地域もそのころ電気が通じるようになったようです。
そんないろんな人達の努力によって自分の生活が支えられてるんだなと感じた1日でもありました。